雲仙温泉街に復活の兆し 高級志向へ転換 県外企業も 協力と競争で発展なるか

 長崎県内有数の観光地、長崎県雲仙市の雲仙温泉街で、県外の旅館・ホテル企業の進出や老舗の営業形態転換が進んでいる。関係者は「半世紀ほどなかったような大きなうねりが来ている。ここ数年で劇的に変化するのではないか」と予測する。変わりゆく温泉街の現状を探った。

 ■新 生 

 今年5月、雲仙地獄のすぐ横に新生「九州ホテル」がオープン。創業100周年を迎えた昨年、雲仙温泉街で3番目に多い客室(95室)を備えていた5階建ての本館を建て替え、姿を大きく変えた。客室数を25に減らし、従来より広くなった各部屋に露天風呂を設置。団体客向けの営業形態から高級志向の個人客向けのホテルに生まれ変わった。

 高級宿泊施設を取り扱う予約サイトの月別集計で、8~10月はエリア別の長崎県内ホテル約30軒の中で2位を維持し、注目度は高い。九州ホテルの七條彰宣社長は「今までとは違う層のお客さまが来てくださる。ここ数年で旅行形態は多様化しており、その変化に対応していきたい」と語る。

 9月に創業50年を迎えた雲仙福田屋は、個人客向けに特化した別館「山照(やまてらす)」を昨年オープンさせた。全7部屋には露天風呂が設置されている。10、11月は本館ともに連日満室状態が続く。

 雲仙市は長崎、佐世保に次いで長崎県内3位の観光客数を誇る。しかし、長崎県の観光統計によると客足は減少傾向。昨年の宿泊客延べ滞在数は約98万人で、初めて100万人を切った。ピークだった1990年(約300万人)の3分の1以下だ。

 現在、雲仙温泉街の旅館、ホテルで営業しているのは13施設。老朽化した施設もあり、ある旅館関係者は「改装も含めて顧客ニーズに対応しなければ生き残れない」と打ち明ける。

 ■黒 船 

 そんな中、県外企業が進出の動きを見せている。全国で温泉ホテルなどを展開する「湯快リゾート」(京都市)は、今年3月に閉館した旧ホテル東洋館を買収。10月17日に雲仙温泉街最多となる客室数149の「湯快リゾート 雲仙温泉 雲仙東洋館」として開業した。

 5月に閉館した「雲仙富貴屋」は星野リゾート(長野県)が株式を取得。開業時期は未定だが、星野リゾートが全国展開する高級温泉ブランド「界」にする方針。さらに9月、雲仙温泉街で最も古い「雲仙湯元ホテル」が冠婚葬祭大手メモリード(総合本部・長崎県西彼長与町)に事業譲渡した。

 外部企業の進出を年配の住民は「黒船」とやゆし、「自然と共存した閑静な温泉という伝統や文化を共有できるのか」と疑問視する向きもある。東洋館の山本善洋支配人は「うちが誘客することで温泉街にも活気が生まれる。協力しながら地域に貢献したい」と強調する。

 一方で、低価格帯から高級志向まで観光客の選択肢が広がったという見方もある。雲仙旅館ホテル組合の宮崎高一組合長は「外部企業の進出は、それだけ雲仙が魅力的だという表れでもある。いい刺激になり、学ぶことも多い」と話す。協力しながらも切磋琢磨(せっさたくま)することで、温泉街全体の発展につなげたい考えだ。

観光客でにぎわう雲仙温泉街。写真奥は「湯快リゾート 雲仙温泉 雲仙東洋館」=長崎県雲仙市小浜町

© 株式会社長崎新聞社