波佐見の真崎さん 日本列島を歩いて縦断

 歩いて、歩いて、ふるさとへ-。長崎県東彼波佐見町中尾郷の真崎棟史(たかし)さん(24)が日本本土最北端の北海道・宗谷岬から最南端の鹿児島県・佐多岬まで徒歩で縦断する旅を終え、24日に帰郷した。111日間歩き続けた棟史さんを家族や近隣住民は温かく出迎えた。
 棟史さんは、陶郷・中尾山で窯元「一真窯」を営む善太さん(60)の長男。留学先のニュージーランドで本格的に登山を始め、日本列島の山々を登りながら縦断する旅を夢見るようになった。
 昨年末に帰国後、家業を手伝いながら準備を進め、6月6日に宗谷岬をスタート。八甲田山、蔵王山、霧ケ峰、木曽駒ケ岳などを登りながら南下し、96日目の9月9日、佐多岬にたどり着いた。その後、種子島と屋久島に立ち寄り、熊本県天草市から海を渡って本県へ。波佐見町の実家までを歩ききった。総距離は約3100キロ。山登りを含めるとさらに長くなる。
 孤独な旅路では「負けるな」と自らを鼓舞しながら歩き続けた。お茶や食べ物を分けてくれたり、宿代を無料にしてくれたりするなど、旅先で出会った人々の優しさに支えられた。蔵王山で濃霧に阻まれ、遭難しかけたときは、偶然出会ったイスラエル人の登山客に救われた。
 出発から111日。小雨が降りしきる中、波佐見町に足を踏み入れると、達成感で全身に鳥肌が立った。「みんなが待っている」。疲れているはずなのに家が近づくと、自然と駆け足になっていた。
 午後6時。自宅前では善太さんら家族とご近所さんが待ち構えていた。坂道を駆け上ってくる息子の姿を見つけ、善太さんは「走らんでよか。ゆっくり来い」と呼び掛けたが、棟史さんは全力で走りきり、倒れ込むようにしてゴールした。
 「よく頑張った」「立派やったね」。ねぎらいの言葉をかける一人一人と握手を交わした後、自宅の縁側に座る祖母に笑顔で言った。「ただいま」
 雨はやみ、夕日が空を染めていた。

日本縦断の旅を終え、帰郷した真崎さん。自宅がある中尾山に入ると自然と駆け足になった=波佐見町中尾郷

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