原城VRアプリ完成 城郭360度ぐるり再現 1日からタブレット貸し出し 南島原市

 「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の世界遺産登録に合わせ、南島原市は、構成資産「原城跡」(南有馬町)にかつてあった城郭などを仮想現実の世界で楽しめるバーチャルリアリティー(VR)アプリを制作し、公開を始めた。スマートフォンなどに無料ダウンロードできるほか、9月1日から現地でタブレット端末の無料貸し出しを始める。
 原城跡は島原・天草一揆(1637~38年)の舞台。幕府側が城を破壊し、現在は石垣の一部などしか残っていない。世界遺産登録で現地を訪れる観光客は急増しており、市は仮想映像で遺跡の価値をより分かりやすく伝えたい考えだ。
 制作は、全国で同様の観光アプリを手掛ける凸版印刷に委託。当時の原城の姿は完全には解明されておらず、城跡の構造や絵図など手掛かりが得られる範囲でデータを集め、年代が近い別の城郭も参考に映像を再現した。事業費は約2500万円。
 アプリを入れたスマホやタブレット端末を原城本丸跡のビューポイント8カ所でかざすと、三層櫓(やぐら)や門、小屋、周辺風景などの映像が画面に現れる。360度に仮想現実の世界が広がり、当時の風景を疑似体験できる仕組みだ。8カ所のうち2カ所では、空高く上がる感覚も楽しめ、本丸周辺を俯瞰(ふかん)できる。解説は日本語、英語で対応。市は「一揆という事件のすさまじさや歴史的意義をより深く理解してほしい」としている。端末は20台を用意し、9月1日から毎日午前9時~午後5時、現地案内所で貸し出す(年末年始などは休み)。
 市などによると、原城跡の来訪者数は、世界遺産登録前の6月が土日祝の9日間で1334人だったのに対し、今月は土日祝の8日間で約3千人と急増している。市は今後の発掘調査を踏まえ、幕府軍の陣地や二の丸、三の丸の映像も追加したい考えだ。原城跡を巡っては、市は周辺駐車場や無料Wi-Fi設備などをこれまでに整備。2020年には物産館や観光案内機能を含めた施設の建設も予定している。

本丸の俯瞰(ふかん)映像では、断崖絶壁の上に建つ難攻不落の姿がよみがえる(南島原市提供)
端末画面上で再現された城郭の映像=南島原市、原城跡

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