平和の折り鶴 “余生”は焼き物に 再利用の試みスタート

 核兵器廃絶や恒久平和を願い、長崎原爆資料館(長崎市)に全国から寄せられる折り鶴を、焼き物の原料として再利用する取り組みが窯業のまち、東彼波佐見町で始まった。町出身のクリエーターや地元高校生らが商品化に挑戦。折り鶴の“余生”に新たな可能性が生まれそうだ。
 波佐見を拠点に町内外のクリエーターが連携して地域活性化を図る「HASAMIコンプラプロジェクト」の一環。折り鶴を焼いた灰を土に練り込んだり、釉薬(ゆうやく)に混ぜたりすることでメッセージ性のある焼き物ができないか-という発想から、町出身の現代美術家、松尾栄太郎さん(41)と戦争や原爆をテーマにした作品を手掛ける岡山県の現代美術家、太田三郎さん(68)が中心となり、乗り出した。
 長崎市によると昨年度、原爆資料館に寄贈を受けた折り鶴は約910キロ。通常は1年間展示した後、市内のリサイクル施設の古紙回収に出している。数年前に市内の製紙業者が折り鶴の再生紙を試作したが、コスト面などの問題もあり継続的な商品化には至らなかった。太田さんは「産業に結び付かないと継続は難しい。窯業関係の企業や職人にも活動が広がってほしい」と期待する。
 原爆資料館から約40キロ分の折り鶴を引き取り、県立波佐見高と県窯業技術センター(同町)の協力を得て試作を進めている。1日は松尾さんらが同校を訪れ、ワークショップを実施。美術工芸科の1、2年生20人が折り鶴を焼き、灰を練り込んだ土で、箸置きや豆皿、お香立てなどを作った。灰で作った釉薬も使い、同センターで焼成。7日に生徒たちが窯から出した。2年の日宇咲季さん(16)は「日用品を通して、使う人に平和を感じてもらいたい」と話した。
 今後、同じく灰から作った線香とお香立てのセットなどの商品化を目指し、収益で活動を維持できる仕組みを探る。松尾さんは「折り鶴を作った人たちにも活動内容が伝わり、想像力をかき立てるような活動に育てたい」と話す。

折り鶴の灰を原料に使った箸置きや豆皿など
灰を焼き物の原料にするため、折り鶴を焼く高校生=波佐見高

© 株式会社長崎新聞社