「ナガサキの郵便配達」 完全邦訳版で復刊

 核廃絶運動をけん引した被爆者の谷口稜曄(すみてる)さん=昨年8月、88歳で死去=をモデルに、30年以上前に英仏で出版されたノンフィクション「ナガサキの郵便配達」の完全邦訳版が完成し2日、関係者が東京都内で披露会見をした。原作者の長女らが出席し「核兵器廃絶に向けたバイブルになれば」と復刊の意義を強調した。
 原作は、第2次世界大戦時に英国空軍大佐だったジャーナリストのピーター・タウンゼント氏=1995年死去=が谷口さんに直接取材し、84年に出版。谷口さんと親交があった齋藤芳弘さん(71)が復刊を手掛け、長崎原爆の日の9日に刊行する。
 会見には、タウンゼント氏の長女で元世界的トップモデル、イザベル・タウンゼントさん(57)=フランス在住=が出席。20代の時、谷口さんがフランスを訪れた際に会い、原爆で焼けただれた背中を見せられ「ショックを受けた」と話しながら、大勢の人に本を読んでほしいと訴えた。
 齋藤さんも「全国の高校生に無料で配りたい夢がある。そこまで版を重ねたい」と話した。
 復刊と同時進行でドキュメンタリーの映画も進行中。映画はイザベルさんが父の足跡をたどり、父のメッセージをひもとくストーリーになる予定。

「ナガサキの郵便配達」の復刊について話すイザベルさん=東京都内

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