FFG・十八銀統合計画 借り換えに協力姿勢 打診受けた金融機関 「すぐ戻られても困る」の声も

 経営統合を目指す、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG、福岡市)と十八銀行(長崎市)から取引先の借り換えを打診された各金融機関は、受け入れるかどうか審査を進めている。再編を推進する金融庁や業界の空気も踏まえ、協力姿勢を示す機関が目立ち、新規客獲得を“渡りに船”と受け止める向きも。一方で、圧倒的な地銀の誕生に手を貸す形になり、「統合後(顧客が)すぐ元のさやに戻られても困る」と複雑な声も漏れ聞こえる。
 「お断りする取引先はないだろう」。本県に3支店を持つ佐賀銀行(佐賀市)の坂井秀明頭取は30日の定例会見で、書類上の審査を終え、打診された債権全額を受け入れる見通しを示した。具体的な取引先数や金額への言及は避けた。
 県内に1支店がある肥後銀行(熊本市)と鹿児島銀行(鹿児島市)を傘下に持つ九州フィナンシャルグループの上村基宏社長も同日、打診があったと認めた。このうち鹿児島銀が受け入れる方向で精査中だという。
 西日本フィナンシャルホールディングス(福岡市)の谷川浩道社長も「長崎県内で(地銀間の)適正な競争環境をつくる」と協力姿勢。長崎銀行(長崎市)と県内3支店を展開する西日本シティ銀行(福岡市)を傘下に置き、最も多い計200億円前後を審査している。幹部の一人は「まだ必要なデータがそろっていない。できればお盆前には作業を終えたい」という。
 借り換えを打診されたのは、県内に拠点がある都銀や信用金庫など約20の金融機関。あるトップは「新規拡大できる」と歓迎する。
 公正取引委員会(公取委)は審査で、FFG傘下の親和銀行(佐世保市)と十八銀が合併した場合、県内企業向け融資シェアが約7割に膨らむと問題視。FFG・十八側は、他の金融機関が借り換えに応じればシェアが下がり、公取委の承認につながると期待する。
 ただ、帝国データバンクの調査によると、十八、親和のいずれかをメインバンクとする県内企業は計約85%に上る。ある銀行トップは「給与振り込みなども握るメインの座を譲ってもらわないと統合後、元のさやに戻られかねない」と警戒。別の金融機関幹部は「断るとその後に取引しづらくなる」と頭を悩ます。金融庁や全国地方銀行協会(地銀協)が再編を推進する中で「逆らえない」と本音もこぼれる。
 統合が実現すればさらに巨大な相手と向き合うことになる佐賀銀の坂井頭取は「それと『取引したい』という顧客の意向は分けて考えないと」と述べるにとどめた。

FFGと十八銀行の統合について見解を述べた坂井頭取(右)=佐賀市唐人2丁目、佐賀銀行本店

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