戦傷病者の苦難伝える「しょうけい館」長崎展 8日まで

 戦争で負傷したり病気になったりした戦傷病者とその家族にまつわる資料を展示する「しょうけい館」(奥野義章館長、東京都千代田区)長崎展が6月30日、長崎市立山1丁目の長崎歴史文化博物館で始まった。8日まで。
 しょうけい館は、戦傷病者と家族の苦労を後世に伝えようと2006年に開館した国立の施設。全国から寄贈された資料を展示している。同館は毎年各地で地方展を開いており、長崎県での開催は初めて。
 長崎展では、寄せ書きのある日章旗のほか、兵士の腕から摘出された砲弾の破片や義眼など、本県関係者から寄贈されたものを中心に、戦争の実相を示す資料70点を公開している。かつて全都道府県にあった「傷痍(しょうい)軍人会」で唯一現在も活動を続ける本県の会の歩みを紹介するコーナーもある。
 会場では、県内の戦傷病者6人の証言映像を放映している。このうち、大村市在住の松下貞義さんは太平洋戦争の際に中国雲南省で夜間戦闘中に負傷。銃弾の破片が顔に十数個入り、右目は明暗しか分からなくなった。松下さんはその経験を基に「戦争は敵も味方も不幸になる」と訴える。
 オープニングセレモニーでは、しょうけい館職員の荒井安敏さんが「(戦傷病者と家族にまつわる)多くの記録を残し、後の世代に語り継がれることを願っている」と奥野館長のあいさつを代読した。

戦傷病者が使用した杖などの展示品に見入る来館者=長崎歴史文化博物館

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