「生きていて申し訳ない」亡き級友思う 長崎県美「無言館」展

 東京芸術大名誉教授で画家の野見山暁治(ぎょうじ)さん(97)の講演会が16日、長崎市出島町の長崎県立美術館であった。同館で開催中の展覧会「無言館 祈りの絵」(県美術館など主催、長崎新聞社共催)の関連イベント。自らも出征経験があり、画家を目指して一緒に学んだ多くの仲間を戦争で失った野見山さんは、「生きていて申し訳ないという思いがある」と話した。約230人が聴講した。
 野見山さんは、1920年福岡県生まれ。東京美術学校(現東京芸術大)油画科を卒業後、応召。満州に出征したのち病気になり、福岡の療養所で終戦を迎えた。52年に渡仏。64年に帰国後は東京芸術大教授などを務めた。2014年文化勲章受章。戦後50年の頃から窪島誠一郎さんと共に、戦死した美術学校の同級生らの遺族を訪ね、遺作を集めた。
 野見山さんは「消えない死者」と題して講演。戦地で「日本に帰りたい」と思った自身の経験を話し、「彼らもどこかで一度は同じ経験をしたと思う。展示してある絵の作者はほとんど顔見知りばかり。うまく描こうという気持ちなどなく、見詰めていたいものを描いた絵。絵とはそういうものだと思う」と話した。
 「無言館 祈りの絵」は7月8日まで(6月25日休館)。観覧料は一般千円、大学生・70歳以上800円、高校生以下無料。

戦地での体験や共に絵を学び戦死した同級生らへの思いを語る野見山さん(左)=長崎市、県美術館

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