南島原市長選終盤情勢 票の行方“視界不良” 両陣営、手応えと不安要素

 任期満了に伴う南島原市長選(10日投開票)は終盤戦に突入した。新人で前県議の松島完氏(38)=無所属=、2期目を目指す現職の松本政博氏(70)=無所属、自民推薦=が一騎打ちを展開。両陣営とも一定の手応えを口にするが、不安要素などもあり、票の行方は“視界不良”だ。

 5日午後、松島氏の選挙カーが近づいてくるのを、雨傘を差した支持者が路上で待っていた。松島氏はその姿を見るや笑顔で降車し、がっしりと握手。選挙戦では精力的に街頭演説をこなし、基幹産業の振興や古里の魅力発信、交流活性化策などを訴えている。
 2議席を3人で争った2015年4月の前回県議選南島原市区。松島氏は自民2候補を相手に1万287票を獲得し、トップ当選を果たした。今回は、出陣式の人の集まりも「県議選以上の盛り上がり」(陣営)で、幹部の一人は「県議3期11年で知名度は浸透した」と手応えを口にする。
 選挙権年齢を「18歳以上」に引き下げる改正公選法が施行されて初の同市長選となり、若年層の取り込みにも余念がない。会員制交流サイト(SNS)では、変革を訴える個人演説会や街頭演説の動画、「感謝感激。走り抜きます」などのメッセージを投稿し、賛同を示す「いいね」を集めている。それでも陣営は「敵陣の組織はうちの数倍。連日フル稼働で回るしかない」と手綱を緩めず集票を急ぐ。

 「産業振興や教育、福祉の充実で『住み続けたいまちづくり』を進めたい」。5日夜、市内公民館であった松本氏の個人演説会。地元自民県議らが壇上に並ぶ中、会場を埋め尽くした約600人を前に2期目の展望を熱く語った。
 今回新たに自民の推薦も取り付け、団体・個人の推薦は前回選挙戦の3倍以上の計約380に上る。初当選以降、地盤の加津佐町以外にも後援会組織を拡大してきた。陣営幹部は「選挙カーに手を振ってくれる人も多く、日に日に手応えが増している」と話す。
 青年部もメンバーが増え、態勢強化。だが、若年層へのアプローチについて、別の陣営幹部は「青年部を通じて支持を呼び掛けているが、(世代が離れた若者の票をどれだけ取り込めるか)未知数」と本音を漏らす。また、ある幹部は、島原半島を地盤とする自民の加藤寛治衆院議員=長崎2区=の「3人以上産み育てて」発言の影響を懸念。保守支持層が多い土地柄だが、「若年や女性層の票が離れないだろうか」と不安を隠せない。

 単独選挙となった前回出直し市長選の投票率は、前々回に比べ12ポイント以上落ち込み、70・43%。市議選と同日選となる今回については両陣営とも持ち直すと予想するものの、「票の行方が読みづらい」と視界不良の戦いを強いられている。

候補者とともに気勢を上げる支持者ら=南島原市内

© 株式会社長崎新聞社