相乗り実現

 韓国旅行の際、博多と釜山を結ぶジェットフォイルを利用する人は本県にも少なくないだろう。約3時間の船旅だ▲博多港を出るとやがて対馬が見えてきて、かなり長い間その島影と並走する。帰国時は、釜山港を出るやいなや対馬北部の島影が見えてくる。国際航路ではあるものの大半は国内にいる感覚だ▲だが対馬から見ると180度違う。島のすぐ鼻先をかすめるこの船は、上対馬の比田勝港に寄港することはあったが、検疫や税関などの問題が壁となり、本土に用事のある島民が乗ることはできなかった。船影を眺めつつ「あれに乗れたら便利なのに」と嘆く住民は多かった▲上対馬の住民が乗れるのは、比田勝港から博多港まで5時間50分かかるフェリー。車両や物資の輸送には重要な交通手段だが、気軽な行き来には使いづらい。国内なのに博多-釜山の倍近い時間がかかるのだから▲そんな状況が7月から変わる。地元の強い要望を受けた関係者の協議が実り、比田勝港に寄港するジェットフォイルに国内客の相乗りが実現する。一つの船が中で仕切られ、国際航路と国内航路を兼ねる▲さまざまな法規制をクリアして前例のない船舶運用に踏み切ることに、関係者は気を引き締めているだろう。思わぬ荒波に揺れることのないよう順調な航海を望みたい。(泉)

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