グループホーム不適切運営 手続き経ず障害者居住 南島原の社会福祉法人 長崎県「火災予防条例に違反」 指導へ

 南島原市の社会福祉法人「ほかにわ共和国」が県に運営を認められないまま、知的障害者4人をグループホームから木造建物の転居先に移し約4カ月住まわせていたことが18日、県などへの取材で分かった。防火設備が十分で建築基準法に適合すると証明する必要資料を県に提出しないまま運営を開始。県は「火災予防条例に違反し、建築基準法に適合した建物かも疑問だ」とし、「不適切な運営」と法人を指導する方針。
 県などによると、同法人は加津佐町のグループホームを利用していた40~60代の障害者の男性4人を、昨年11月27日に同町の別の木造2階建て(延べ床面積約198平方メートル)に移し、今年3月29日まで住まわせていた。建物は約50年前の建築。
 グループホームに関する規則では、移転する場合、県は国の通知に基づきホーム指定の変更届に加え、消防機関が防火設備を十分と認めた書類と、建築基準法を満たすと県が認めた書類の提出を法人側に求めている。同法は建物をホームに用途変更する必要がある場合、事前に県への届け出を義務付け、地元消防機関の火災予防条例ではホーム利用開始前に届け出が必要と定めている。
 しかし、同法人は障害者を移した後の昨年12月に変更届を提出。移転時期は「今年1月1日」と実態と違う説明をした。防火や建築確認に必要な書類は添付しておらず、県が「移転は認められない」と伝えると、法人は2月に変更届を取り下げたが、実際は3月下旬まで障害者を住まわせていた。
 2013年、5人が死亡した長崎市のグループホーム「ベルハウス東山手」の火災では、防火扉や排煙窓の不備など建築基準法違反や消防法違反が判明し社会問題化した。
 同法人は取材に「指定を得ていない物件なので利用者に『外泊扱い』として滞在してもらった。毎日職員を配置し、防火の届け出書はそろっていないもののベルハウスのような火災を起こしてはならないと消防設備を整えた」とする。一方、県は「4カ月の『外泊』は一般的に想定していない」としている。

社会福祉法人が障害者4人を約4カ月住まわせていた木造建物=南島原市加津佐町

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