「お金では得られない幸せ」 東京から小浜へIターン

 都市部から長崎県内への移住者が年々増加している。5年前、東京から雲仙市小浜町にIターンした奥津爾(ちかし)さん(43)と典子さん(44)夫妻は、3人の子どもたちの学校行事や地域の活動に積極的に参加し、地元に溶け込んでいる。「お金では得られない幸せがある」と笑みを浮かべる。
 夫妻は東京で飲食店や料理教室を営み、当時は2人の子育てなどで慌ただしい生活を送っていた。マンションに暮らしていた時は下の階の住人に遠慮し、子どもたちに「家の中で走っちゃだめ、ジャンプしたらだめ、と禁止してばかりだった」という。
 都心には高層ビルが林立し、自然も少ない。もっと伸び伸びと子育てができる環境を求め、移住先を探し始めた。
 札幌や神戸など10カ所以上の候補の中に雲仙市も含まれていた。実際に訪れてみると、夕日が海に沈む様子、棚田や湧き水の美しさなどに感動。擦れ違う時、はつらつとあいさつしてくれる子どもたちがほほ笑ましかった。そんな日常が気に入り、2013年8月に移住した。
 その後、爾さんは月に数回、東京から福島に移した店に出向き、典子さんも料理教室開催のため県外に出掛けているが、収入は半減。それでも典子さんは「家族の時間が増えて幸せ」と話す。
 現在、小浜町はシャッターが下りたままの店も増え、人口減少が進んでいる。県全体が直面するこの問題に対する爾さんの考え方はシンプルだ。「大人が楽しむことが大切」。そんな姿を子どもたちが見て育てば、将来、地元に住みたいと思うはず。まずは自分自身が生き生きと生活しようと思う。そうすることが「たくさんのものを与えてくれる小浜への恩返しになる」と信じている。

「自然の美しさなど地方の良さを大事にしてほしい」と話す典子さん(左)と爾さん=雲仙市小浜町

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