来年の長崎市長選 市議が出馬意欲 県議も表明へ 田上市政へ不信感高まる

 2019年4月の次期長崎市長選に向け、立候補を目指す動きがじわりと進んでいる。市議の一人は出馬に強い意欲を示し、3期目の現職田上富久氏(61)の複数の支持者が支援に回りそうな情勢だ。他にも長崎市区選出の県議が近く出馬を正式表明する。田上氏は態度を明らかにしていないが、新人が立とうとする背景には、相次ぐ住民投票請求や歯止めがかからない人口減少など市政への不信感が高まっていることがあるとみられる。前回15年は無投票だったが、次回は選挙戦になる公算が大きい。

 「すまないが、次は応援できない」。17年秋、ある市議は市長公舎を訪ねて頭を下げた。正面に座る田上氏は少し驚いた表情を浮かべ、「たもとを分かつということか」。そうつぶやいたという。

 この市議は、田上氏が初当選した07年の市長選から熱心に支援してきた。だが同じ会派の市議から出馬への「強い意志」を聞いて共感、支えると決めた。さらに田上氏を応援してきた地元の有力企業の経営者らも“くら替え”する見通しだ。

 出馬に意欲があるとされる市議は「まだ表明する時期ではない」と明言を避けつつも、16年以降、新市庁舎の建設場所や市公会堂解体などを巡り、住民投票を求める直接請求が4回も起こり、田上氏がこれにすべて反対したことを問題視する。「今の市政は市民と対話し、意見の違いを埋める努力を怠っている。情報公開も不十分で行政運営が健全ではない」と指摘する。

 一方、長崎市区選出の県議、高比良元氏(65)は早くから準備を進めてきた。人口減少など市政の課題をまとめた「マニフェスト」の冊子を16年から支持者らに配布。17年秋の衆院選では自民候補の応援弁士で登壇しながら、市長選出馬への意欲を口にした。

 前回は市議選を優先し、市長選の候補擁立を断念した共産も「現職とは政策で常々対立している。何らかの形で対抗したい」としているほか、出馬を模索する元市議もいる。

 候補乱立の可能性もある中、地元経済界には大きな動きはない。ただ市がJR長崎駅西側に計画するMICE(コンベンション)機能を中核とする複合施設の成否が、その動向に影響するのではないかという見方がある。施設整備は市が6月定例市議会に提出する契約議案の可決で確定する。ある市議は「MICEは経済界の長年の悲願。市長は“貸し”を作り、打って出るのではないか」と話す。

 田上氏の後援会も対立候補の動きをつかんでいるが、後援会幹部は「現職を批判するのは一部の人たち。市民全体で考えれば評価されている」と動揺はない。田上氏の出馬に備え「心構えはしている。むしろ多くの候補者が出た方が、市民の本音が聞けて望ましい」と選挙戦を歓迎している。

選挙戦の公算が大きくなった来年の長崎市長選。現職の田上氏は態度を明らかにしていないが、市政への不信感などを背景に新人が出馬を模索する動きが進んでいる(写真はコラージュ)

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