離島の魚、翌日首都圏へ 「スピード物流」構築 長崎県、新法活用  販路拡大に期待

 長崎県は、県内離島で水揚げされた鮮魚を翌日中に首都圏の飲食店などに届ける「スピード物流」の仕組みを新たに構築した。国境離島新法を活用した輸送路集約でコストを削減し、空輸を可能にした。従来より1日早く届き、販路拡大が期待できる。

 県地域づくり推進課によると現在、離島で水揚げされた鮮魚は主に船とトラックで輸送している。五島市は長崎港へ、新上五島町は佐世保港へ、壱岐、対馬両市は博多港へ海路で運び、それぞれ約1日かけて首都圏の市場へ陸送。このため飲食店に届くのは水揚げから2日後となる。

 新しいスピード物流は、4月に施行された新法の支援メニューを生かし、離島4市町がそれぞれ立ち上げた「地域商社」が各地の鮮魚を長崎空港に集め、飛行機でまとめて運ぶ。翌日朝には、東京の配送センターから直接、飲食店やホテルに魚が届く仕組みだ。

 到着が早い分、鮮度が高く商品価値が上がるだけでなく、市場を経由しないメリットもある。市場では通常、魚種ごとにサイズをそろえ、まとまった数量を出すよう求められる。一方、新しい物流では、さまざまな種類やサイズの魚を詰め合わせて飲食店などに売るため、珍しい魚も喜ばれ、高値で売れるという。

 11月から本格的に運用を開始し、既に東京、神奈川、千葉、埼玉の40店舗に届けている。中でも県が売り込みに力を入れるのが、海のない埼玉県。秩父地方のレストランや旅館を対象に商談会を開いたところ多くが高い関心を示し、6件で取引が始まった。

 同課は「1日早く届くだけで想像以上に反響が大きい。国境離島の産業振興という(国策的な)意義もしっかりPRし、さらなる販路拡大を目指したい」としている。

© 株式会社長崎新聞社