東京都渋谷区の小田急線代々木上原駅から数分歩くと、ドーム形の屋根やミナレットと呼ばれる細長く、とがった塔が見えてくる。東京ジャーミイ。トルコ語の「ジャーミイ」はイスラム教の大きな礼拝所(モスク)を意味する。土日は午後2時半から予約不要の無料見学会があり、日曜日の8月13日は約80人が集まった。女性が多い。
「イスラム教徒(ムスリム)は16億人。将来は現在22億人のキリスト教徒より多くなると言われているが、ごく一部のテロで『怖い』というレッテルを貼られている」
1階のホールで広報担当の下山茂さん(68)が見学者に説明を始めた。
▽礼拝、心の糧に
ムスリムに集団礼拝が義務付けられている金曜日の8月18日。東京ジャーミイの礼拝堂は満員となり、テラスに人があふれた。都内に住むトルコの人々や日本人数人のほか、留学中のセネガル人や群馬県から来た実習生のインドネシア人。
「一家で旅行中」という中国・雲南の男性には男の子が寄り添う。妻は女性用のスペースへ。旅行者はフランスやパキスタンからも。バングラデシュの男性は「国際協力機構(JICA)で研修中」と話した。
午後0時45分、集団礼拝の始まりが告げられ、イマーム(指導者)が聖典コーランの一節を引いて説教する。善行や誠実を求めているようだ。
同1時15分から、700~800人が一斉にいつもの礼拝に。テラスのカーペットが足りず、段ボールを敷く人もいた。
礼拝が終わると、ここはコミュニケーションの場。「アッサラーム・アライクム(あなたに平安あれ)」と声を掛け、手を差し出すと、初対面でも「アレイクム・サラーム(あなたにこそ)」と言って手を握り返す。
「黙っていたら、敵か味方か分からない。『平安あれ』と手を伸ばしてみる」と下山さん。「日本は欧米ばかりを手本にしてきたが、世界宗教のイスラム教から学ぶことはたくさんあるはずだ」(共同=竹田昌弘)