【第38回】「テロ宗教ではない」 普遍的平等、分かち合い  日本人がイスラム広報

無料見学会の参加者に礼拝堂の説明をする下山茂さん。「礼拝では(両手を下から耳の横まで上げる)最初のポーズで仕事のこととか、家のこととか、全部後ろへやって、神と向き合う。イスラムは形の宗教」=8月13日、東京都渋谷区の東京ジャーミイ(撮影・萩原達也)

 東京都渋谷区の小田急線代々木上原駅から数分歩くと、ドーム形の屋根やミナレットと呼ばれる細長く、とがった塔が見えてくる。東京ジャーミイ。トルコ語の「ジャーミイ」はイスラム教の大きな礼拝所(モスク)を意味する。土日は午後2時半から予約不要の無料見学会があり、日曜日の8月13日は約80人が集まった。女性が多い。
 「イスラム教徒(ムスリム)は16億人。将来は現在22億人のキリスト教徒より多くなると言われているが、ごく一部のテロで『怖い』というレッテルを貼られている」
 1階のホールで広報担当の下山茂さん(68)が見学者に説明を始めた。
 

 ▽礼拝、心の糧に

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 ムスリムに集団礼拝が義務付けられている金曜日の8月18日。東京ジャーミイの礼拝堂は満員となり、テラスに人があふれた。都内に住むトルコの人々や日本人数人のほか、留学中のセネガル人や群馬県から来た実習生のインドネシア人。
 「一家で旅行中」という中国・雲南の男性には男の子が寄り添う。妻は女性用のスペースへ。旅行者はフランスやパキスタンからも。バングラデシュの男性は「国際協力機構(JICA)で研修中」と話した。
 午後0時45分、集団礼拝の始まりが告げられ、イマーム(指導者)が聖典コーランの一節を引いて説教する。善行や誠実を求めているようだ。
 同1時15分から、700~800人が一斉にいつもの礼拝に。テラスのカーペットが足りず、段ボールを敷く人もいた。
 礼拝が終わると、ここはコミュニケーションの場。「アッサラーム・アライクム(あなたに平安あれ)」と声を掛け、手を差し出すと、初対面でも「アレイクム・サラーム(あなたにこそ)」と言って手を握り返す。
 「黙っていたら、敵か味方か分からない。『平安あれ』と手を伸ばしてみる」と下山さん。「日本は欧米ばかりを手本にしてきたが、世界宗教のイスラム教から学ぶことはたくさんあるはずだ」(共同=竹田昌弘)

礼拝堂からあふれ、テラスで金曜日の集団礼拝をするムスリムたち。Tシャツ1枚の若い男性も、スーツを着た年配の男性も横一列に並び、膝を折り、額や鼻、手を床に付けている=8月18日、東京都渋谷区の東京ジャーミイ(撮影・萩原達也)

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