自然志向と弱者・少数者への目配り 食品見本市FOODEXに7万2000人

「FOODEX JAPAN 2018」の会場全景

 

 世界の83の国や地域、日本全国から約3400の組織団体が出展した国際食品見本市「FOODEX JAPAN 2018」が、このほど千葉市美浜区の幕張メッセで開かれた。4日間の会期中約7万2000人が訪れ、世界の味を堪能した。(47NEWS 中村彰)

 多彩な食材が会場を満たしたが、今回はオーガニックなど自然志向や食の安全と、女性の労働に配慮したりイスラム教徒やベジタリアンなどの弱者や少数者にターゲットを絞ったりした展示が目立った。

 年間750万トンの牛肉を生産する欧州連合(EU)は、トレーサビリティーの徹底を強調。ホルモンや成長促進剤の使用禁止、苦痛からの解放など動物福祉への配慮した生産体制をPRしていた。

 「和豚もちぶた」を生産するグローバルピッグファーム(群馬県渋川市)は、自然分娩(ぶんべん)、自然飼育が原点。病気の豚に薬物を投与するのではなく、動物が本来持つ抵抗力、免疫力を引き出すことで病気の予防を図っている取り組みを紹介。

 1978年から低温殺菌のパスチャライズ牛乳を商品化している島根県雲南市の木次乳業。乳牛は放牧されて草をはんでのびのびと暮らし、配合飼料はもちろん非遺伝子組み換えだ。一口、口に含むと牛乳本来のほのかな甘みとこくが感じ取れる。そう担当者に伝えると「そうでしょう」と満足げだった。

 イタリア・シチリア産有機ブラッドオレンジジュースは、朝摘みの果実を搾ったもの。太陽の光をたっぷりと吸収した果汁からは、爽やかさが広がる。

 ラガーワイン(山梨県山梨市)のブランドの一つ「タックル」の特長は、間引いた早摘みのブドウを使用していること。若々しくはあるが、辛口、フルーティーで飲みやすい。社名や銘柄の由来はラグビー仲間で町おこしをしようということから。「ラガー魂で地元産にこだわり頑張ります」と、田草川和仁代表取締役は力を込める。

 

キャラバンカーで紅茶を配布する

 女性の権利を擁護する姿勢を宣言しているのはフランスの紅茶メーカー「ジャンナッツ」だ。世界の紅茶産業労働者の9割以上が女性だといい、同社は彼女らの健康を援助し権利を拡大する運動に力を入れている。また「ジャンナッツティーキャラバン」を実施、黄色いキャラバンカーを走らせ、頑張る女性に1杯の紅茶をプレゼントしている。

 ベジタリアンや何らかの理由で肉を口にできない人にお薦めなのが大豆ミート。「かるなぁ」(名古屋市)のブースで試食してみたのだが、味も食感もお肉そのもの。加工技術の進化に驚かされる。同社はハンバーグ、空揚げなどの定番のほか、ミンチ、ばら、フレークなどの素材を用意して、そぼろあんかけ、パスタミルフィーユかつなど、多彩なメニューを提案している。

ハラルフードの展示ブース

 

 イスラム教徒向けにハラル対応の和の総菜を展開しているのが日乃本食産(兵庫県三田市)。ハラルの牛肉はジューシーでうま味が十分。肉じゃが、牛どん、煮染め、揚げナス肉みそ和えなど、バラエティーに富んだ商品展開をしている。同社は業務用専門だが「おかげさまでホテルや旅館の朝食やビュッフェの需要が伸びています」と担当者。

オーストラリアのブースでカンガルー肉を調理する女性

 

 中には変わり種も。京都市の「おちゃのこさいさい」は、ハバネロを使用した「世界一辛い」一味と七味を出品し舞妓さんがサンプルを配布。オーストラリアのカンガルーミートは、臭みもなく軟らか。かむほどに肉汁があふれ出てくる。

目の前で生ハムが切り分けられた

 

 石川県の事業者はぬかに数年つけ込み毒抜きしたフグの卵巣を出品。初めて口にしたが、ねっとりとしたうま味。危険な食材を珍味に仕立てた先人の知恵に頭が下がった。

 

 

 

 

キャラバンカーで紅茶が配られた

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