
新潟市中央区の商店街に突如現れる縦3メートル、横17メートルの壁画に夜景やピアノと共に描かれているのは名誉市民でもあるジャズ界の巨匠、デューク・エリントンだ。「A列車で行こう」などで知られ、記念したイベントは23年目を迎えた。実行委員会の高坂元己(こうさか・もとみ)理事長(68)は「新潟とエリントンのつながりを語り継いでいきたい」と話す。(共同通信=井上慧)
きっかけは、1964年6月に発生し、26人が亡くなった新潟地震だった。発生3日後に初来日したエリントンは予定していたホノルル公演を中止。東京で慈善公演を開催し、当時の金額で90万円余りの収益を寄付した。市は2年後「国際親善名誉市民」の称号を贈った。
2003年から開かれているエリントンを記念した「新潟ジャズストリート」。新潟市の繁華街、古町周辺のジャズ喫茶や飲食店などで新潟県内を中心に活動するミュージシャンや地元高校の吹奏楽部などの演奏が楽しめる。
1月下旬に行われた第45回は計約130組が28会場で演奏を披露した。複数の会場を自由に行き来できる2千円のチケットは2千枚以上売れ、終日満員の会場もあった。1日で4カ所を巡った新潟市の60代女性は「15年ほど前から来ている。好みのジャンルや演奏を見つけられるのが魅力」と話した。
2005年にジャズの聖地、米ルイジアナ州ニューオーリンズをハリケーンが襲った翌年の開催では、観客からの義援金を被災地へ寄付した。昨年は能登半島地震の被災地へも寄付を行い、高坂さんは「助け合いのDNAが染み込んでいる」と話す。
課題は次世代への継承だ。ジャズ喫茶のオーナーらで構成する実行委員会は高齢化が進む。高坂さんは「新潟とエリントンのつながりをきっかけに、まずはジャズを聴き始めてみてほしい」と語った。




