
かつてナウマンゾウ1体の化石がまとまって出土した北海道忠類村(現在の幕別町)で昨年10月、同一個体のものとみられる化石が54年ぶりに発掘された。未発見だった頭骨の一部で、付近に残りの化石が眠る可能性も。平成の大合併で消滅した村の「宝」が再び脚光を浴びている。
「冷害が多く貧しい村で、ほぼ唯一の明るい話題がナウマンゾウだった。今回の発見で、また忠類が盛り上がってくれれば」。2006年に幕別町と合併した際の最後の村長だった遠藤清一さん(79)は昨年12月、かみしめるように語った。
1969年7月、道路工事中の作業員が20センチ大のかたまりを見つけ、ナウマンゾウの歯の化石だと判明した。村を挙げて発掘に協力し、役場に勤めていた遠藤さんも現場の交通整理を担当。研究者が計168人も訪れ、約1年で全身骨格の70~80%を掘り出した。
同一個体の化石がこれだけ見つかったのは当時国内初。村は「ナウマンゾウのまち」とアピールし、1988年には記念館がオープンした。村や合併後の幕別町は、その後も折に触れて調査や発掘を試みたが、残りの化石の発見には至らなかった。
「ようやく成果を残せてほっとした」。今回の発掘を主導した幕別町教育委員会の学芸員添田雄二さん(51)は笑う。
2007~2008年の調査には町外から参加。従来、忠類のナウマンゾウは沼にはまってその場で死んだと考えられてきたが、死後に洪水で流されてきたことが判明した。21年に学芸員に採用されると、住民らと洪水の流路を中心に調べ、未発掘箇所を特定。昨年10月、縦横約7センチの頭骨の一部を掘り当てた。過去の発掘地点からは、わずか60センチしか離れていなかった。
見つかった化石は期間限定で記念館に展示され、地元中学校の学校だよりでも紹介。発掘が進めば全身骨格の完全復元も期待できるといい、添田さんは「郷土に宝を残したい」と意気込んだ。


