悪魔は払うが観光客は呼ぶ、伝統の木製仮面 スリランカ漁業の町に私営博物館

頭部が燃え盛るデザインの仮面=2024年11月、スリランカ・アンバランゴダ(共同)

 インド洋に臨むスリランカ南部の漁業の町アンバランゴダに、魔よけの木製仮面の伝統を受け継ぐ小さな私営博物館がある。仮面は目が突き出て恐ろしい形相をしているが、どこかユーモラスでもある。悪魔払いの一方で、観光客の呼び寄せにも一役買っている。(共同通信ニューデリー支局=岩橋拓郎)

 「他人のねたみが家に入らないよう、仮面を玄関に飾っておくんだ」。博物館を運営するウィジェスリヤさん(77)が館内の壁一面に飾られた色とりどりの手作り仮面を見ながら説明した。

 仮面作りには何世紀もの歴史があるといい、悪魔払いの儀式や仮面劇にも使われる。災いを近づかせないため、頭部から炎が燃え盛っている迫力あるデザインの仮面もあれば、歯をむき出しにして笑っているような表情のものもある。

 博物館は工房を併設し、職人たちが木を削る小気味良い音が周囲に響く。完成した仮面は館内で販売。高価なものは35万スリランカルピー(約19万円)、手頃な価格では5千スリランカルピーほどだ。

 材料には周辺に生えている湿気に強い種類の木材「カドゥル」を使う。毒が入っていて虫が食べないのだという。のみや木づちで目鼻の形を整えた後、暖炉の煙でいぶし、時間をかけ乾燥させる。魚の皮と木の葉で表面をなめらかにし、仕上げに色を塗って完成だ。

 工房では10人近くの職人が働いている。約20年、仮面作りを続けてきたナンダシリさん(62)によると、1週間に30個ほど作る。「全ての作業に技術が必要だが、特に小さなパーツに色を塗るのが大変だ」と話す。

 博物館は1987年に開設した。「多くの人に仮面のことを知ってほしいから入場料は取らない」とウィジェスリヤさん。欧州やオーストラリアからの観光客やスリランカの学生が見学や購入に来てくれるといい「小さな村の伝統に目を向けてくれたらうれしい」と語った。

仮面のパーツに色を塗る女性たち=2024年11月、スリランカ・アンバランゴダ(共同)
仮面について説明するウィジェスリヤさん=2024年11月、スリランカ・アンバランゴダ(共同)
博物館を運営するウィジェスリヤさん=2024年11月、スリランカ・アンバランゴダ(共同)
スリランカ・コロンボ、アンバランゴダ

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