中谷正義がロマチェンコとラスベガスで対戦 井上尚弥の防衛戦上回る注目度

2014年1月に東洋太平洋ライト級王座を獲得した中谷正義

 6月19日、世界ボクシング協会(WBA)、国際ボクシング連盟(IBF)バンタム級統一チャンピオンの井上尚弥(大橋)が、米ネバダ州ラスベガスで防衛戦を行うが、それ以上にファンの注目を集めているのが同26日、元東洋太平洋ライト級王者、中谷正義(帝拳)が、元世界3団体統一王者のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)と同じラスベガスで闘う12回戦だろう。

 中谷はアメリカンドリームの実現へ向け、全てを懸けてリングに向かうはずだ。

 中谷は大阪市出身の32歳。アマチュアで経験を積んだ後、2011年にプロ転向。荒々しいファイトで頭角を現し、14年1月に東洋太平洋王座を獲得、11度の防衛に成功した。

 19年7月、米メリーランド州でIBFライト級王座挑戦者決定戦をテオフィモ・ロペス(米国)と行ったが、判定負けを喫した。デビュー後、「一回でも負けたらやめるつもりだった」そうで、王座を返上し、現役引退を表明した。

 しかし、20年に現役復帰を発表、帝拳ジムから再スタートを切ることになった。そして、運命の一戦を迎える。

 12月12日、ラスベガスで世界ランカーのフェリックス・ベルデホ(プエルトリコ)とグローブを交えた。

 1回と4回にダウンを喫し、KO負けも考えられる大苦戦に陥った。

 だが必死に耐え、疲れが見える相手から9回にダウンを奪い返し、逆転のTKO勝ちを収めた。これで一気にライト級の世界戦線に名乗りを上げた。

 そして、待ち望んだ大一番が決まった。相手のロマチェンコは現在無冠だが、長い間パウンド・フォー・パウンド(体重同一と仮定したランク)のトップに君臨した実力者だ。

 北京、ロンドン五輪で金メダルを獲得後、プロ転向。ハイテク(高性能)と呼ばれるテクニックには定評があり、世界最速の12戦目に3階級を制覇した実績を誇る。

 昨年10月に王座を失ったが、右肩を手術して今回の再起戦に臨んでくる。

 中谷にとっては決して大げさではなく、ボクサー人生を懸けた一戦といえるだろう。しかも場所は本場ラスベガス。勝てば一気にスターの称号が手に入る。

 最大の関心はロマチェンコのスピードをどう封じ、自慢の強打をヒットすることができるかだ。

 戦績は19勝(13KO)1敗でKO率は6割5分。一級品の技をかわし、中盤以降の打撃戦に活路を見いだすことができるか。スリリングな攻防に期待したい。(津江章二)

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