「黄金のバンタム」ジョフレの評伝完成 米国のボクシング作家が20年かけ取材

ジョフレの評伝を持つ筆者のクリス・スミス氏

 世界のボクシング史を彩る名ボクサー、エデル・ジョフレ(ブラジル)の評伝が完成、近くアマゾンを通して発売される。

 1960年代に活躍したジョフレは、バンタム級とフェザー級の世界2階級を制覇。安定感のある揺るぎない強さは「黄金のバンタム」と形容され、多くの専門家からバンタム級史上最強と高く評価されている。

 そのジョフレに魅せられた米国人の作家クリス・スミス氏が、20年の歳月をかけて取材し書き上げた。

 ボクシング史研究家でもあるスミス氏は、ブラジル初の世界王者ジョフレのボクサー人生に感嘆したという。

 米国、日本など海外でも実績を積んだ。「ジョフレのスタイルには芸術を感じる。バンタム級どころか、すべての時代を考慮してもベスト10には入るだろう。そして、リングの中だけではなく、彼は人間的にも素晴らしいものがある」と執筆の動機を語った。

 ジョフレは1936年3月26日、サンパウロで生まれた。まずアマチュアで頭角を現し、メルボルン五輪に出場、ベスト8まで進んだ。

 148勝2敗の驚異的な成績を残し、プロに転向。白星だけを積み重ね60年、世界バンタム級王座を獲得した。

 63年に初来日。青木勝利を3回、左フックのボディブローでキャンバスに沈め、日本のファンにその実力を示した。

 8連続KO防衛中で、プロ不敗のジョフレは65年5月、ファイティング原田の挑戦を受けた。

 予想は圧倒的有利だったが、4回に右アッパーを食い、ダウン寸前のピンチを迎えた。続く5回、逆に原田をグロッギーに追い込み、意地を見せた。

 激闘は続いたが、小差の判定でタイトルを失った。しかし、精神的なダメージがある中、原田を抱き上げて祝福した。

 当時を原田は「うれしかった。優しさにジーンときた」と振り返っている。

 リターンマッチでも判定負けし、引退を表明。3年3カ月後に復帰し、世界フェザー級王座を奪い、37歳で2階級制覇を果たした。

 「ブラジルの誇り」とたたえられたのも当然だろう。サッカー王国に現れたボクシングのスーパースターである。

 プロの戦績は72勝(50KO)2敗4分け。2敗は原田に喫したものだ。

 そのジョフレと原田の再会計画が新興組織西海岸ボクシング殿堂の関係者の間で進んでいる。

 新型コロナウイルスの影響次第だが、今年の10月17日、ロサンゼルスのホテルが予定されている。

 スミス氏は「二人の再会は我々の夢。何とか実現したい」と願っている。(津江章二)

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