<大ヒット盤>YUI『NATURAL』優しく穏やかに音楽楽しむ

 2005年のソロデビューから数えて15周年記念となるミニアルバム。ジャケットなどの近影からは、母性を感じさせるが、音楽の方は、外見とはまた異なる成長ぶりが見て取れる。

 CDは、2012年までのソロ活動時代にヒットした6枚のシングル曲をセルフカバー。全体に、地方出身というあどけなさを残しつつ、大人への反抗を体現したようなトゲはなくなり、その分、常に笑顔でいるような雰囲気が伸びやかな歌声から伝わってくる。“女・尾崎豊”と言われたデビュー曲『feel my soul』は可愛いし、もともとラブソングとして人気のあった『CHE.R.RY』はより甘い感じ。孤独と向き合った『Good-bye days』は、浮遊感が漂ったアレンジで過去を優しく見守るようだし、『GLORIA』も純粋にバンドサウンドが楽しめる。自身のバンド、FLOWER FLOWERの演奏により、まさに“NATURAL”に音楽を楽しんでいるようだ。特に『SUMMER SONG』のラストに「君を好きになれて良かった」「奇跡なんだ」といった歌詞を加えて穏やかに歌うことで、長年のファンへの想いが伝わってくる。

 映像の方は、FLOWER FLOWERとして2020年に発表した3曲と、CD同様に変更した『SUMMER SONG』のLIVE映像を収録。その中で最新シングルの『はなうた』の楽しげなパフォーマンスに、現在の充実ぶりが感じ取れる。本作を聴けば、やり場のない怒りや出口の見えない将来も、いずれ“NATURAL”な糧になると少しは気が楽になるはず。

(ソニー・CD+BD初回生産限定盤 3000円+税)=臼井孝

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