2021年シーズンのJ1は4チームが自動降格 熾烈なレースが予想される残留争い

昨季、優勝を決め、喜ぶ川崎・鬼木監督(手前)ら=等々力

 昨年に引き続き、かなりタイトな日程だ。今季のJリーグは、J1を見ても前半は基本的に週末と週中の2試合の繰り返しだ。これを書いている2月16日の時点では東京五輪は開催の可否さえ定かではないが、五輪でシーズンが中断する7月中頃までに20節以上を突っ走らなければいけない。よく考えてみたら、今季、J1のチーム数は2チーム増えている。昨季はJ2への降格がなかったので20チームだ。試合数も4試合増える。たかが4試合と考えるのか、4試合もと思うのか。チームによっては選手のやり繰りがかなり難しくなるだろう。

 週2回の試合があるということは、当然のことだが練習の内容は肉体面でのリカバリーが中心となる。戦術的な練習は限られるだろう。そうなれば、シーズン中に低迷したチームを立て直すのは簡単ではなさそうだ。それを考えれば、同じ監督で継続的な強化をしているチームが有利となる。

 優勝争いは、川崎を中心に展開されるのは誰の目にも明らか。中村憲剛、守田英正が抜けても不安はほとんどない。そのような中、より注目されるのはJ1残留争い。なにせ今季は4チームも自動降格してしまうからだ。例年ならば、シーズン前半は高い理想を持って新しい試みにチャレンジするケースが多い。それがうまくいかず、現実路線に戻って残留を目指すというパターンがよく見られる。しかし、4チームが降格となると、そんな悠長なことは言っていられない。実力的に劣るチームは、開幕直後から地道に勝ち点を拾っていかなければ、年末にはJ1の舞台から去らなければいけない。

 開幕前の順位予想で、当たったためしがないので確信を持って言えるほどでもない。ただ、例年の傾向を見ればJ2からの昇格組の苦戦は免れないだろう。今季は、それが徳島と福岡になる。

 特に心配なのは昨季J2を制した徳島。リカルド・ロドリゲス監督が浦和に去り、スペイン出身のダニエル・ポヤトス新監督が就任した。新たな体制で7年ぶりのJ1に向かって始動するはずだった。しかし、新型コロナ対策で外国人プロスポーツ選手らの新規入国が一時停止されたために大幅に合流が遅れた。戦術家との触れ込みの高いポヤトス監督だが、その戦い方をチームに浸透させるには、あまりにも時間が足りない。

 昨季14位の神戸は、あまりにも費用対効果が悪かった。それでも「いざとなれば」の資金力は突出している。その下の順位となったのが、横浜FC(15位)、清水(16位)、仙台(17位)、湘南(18位)。当然、下位チームは今シーズンも降格争いに巻き込まれる可能性は十分ある。

 ただ、降格がないという昨年のレギュレーションをうまく使ったと思えるのが横浜FCだ。下平隆宏監督は昨年の第18節の首位川崎戦で、三浦知良、中村俊輔、松井大輔の大ベテラン3人をそろって先発させるなど大きな話題をつくった。しかし、それは小さなことで、開幕時19歳だった安永玲央を筆頭に、松尾佑介や瀬古樹ら経験の少ない大卒1年目選手も含め、若手を積極的に起用した。この結果、若い選手たちはプレッシャーの少ない状態で自分の持ち味を発揮し、シーズン終盤にはレギュラーとしてプレーするようになった。その意味では今年のチームは昨年のチームよりスタート時点で実力は上だ。決定力に欠けた面もあったアタッカー陣には、小川慶治朗、ジャーメイン、伊藤翔、渡辺千真の即戦力を大量補強。期待の持てる陣容が整った。

 昨季もリーグ最多の70失点。おそらくテコ入れをしなければ降格の大本命に挙がっていただろう清水が、これまでにない大型補強を行った。継続性を考えれば監督交代はマイナス面なのだが、昨季16位なら問題ないといえるだろう。しかも、新監督はC大阪をアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)に導いたロティーナ監督となれば、言うことはない。

 ロティーナ監督のサッカーに派手さはない。それでも確実に勝ち点を重ねていく。基本となるのは堅実な守備をベースにした組織力だ。さらに最大の弱点だった守備には素晴らしいパーツがはめ込まれた。GKのポジションに、ポルティモネンセから期限付き移籍で日本代表の権田修一が加入した。ポルトガルで出場機会を失っていた点を考えれば、権田のJ復帰は日本代表にとってもプラスに働く。また、センターバックには昨季の大分のキャプテン、鈴木義宜が完全移籍で加わった。不安を抱えていたゴール前が一挙に堅固になった。

 昨季の清水は、順位の割に攻撃力は高かった。48ゴールはリーグ6位。それがさらにパワーアップしている。入国制限のために新加入のウィリアムマテウスの合流は遅れたが、同じく新加入のチアゴサンタナは早めに来日したため2週間の隔離を経て合流。さらに昨季J2で得点ランキング2位の18ゴールを挙げたディサロも加わった。外国から加入した2トップの当たりはずれはあるだろうが、期待通りの得点力を見せれば、残留争いから早々と抜け出す可能性がある。

 いずれにしても今季のJ1残留争いは、かなりシビアな展開となりそうだ。降格のあるリーグ戦は、下位集団の試合にも魂がこもるので見どころは多いはずだ。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はロシア大会で7大会目。

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