『キル・チーム』戦争は人間の正義を歪ませる恐怖を孕む

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 2度にわたってアカデミー賞にノミネートされたドキュメンタリー作家のダン・クラウスが、アフガニスタンで米兵が一般市民を殺害していたという恐ろしい実話に迫ったドキュメンタリー作品「キル・チーム」(日本未公開)を、同監督がアクションドラマとして新たに映画化した作品です。

 主人公は、正義感と愛国心に溢れ、「アメリカのために戦う」と誓ってアフガニスタンに渡ってきたアンドリュー二等兵。彼の目前で地雷によって亡くなった軍曹の代わりはディークスという男。治安を守ることを口実に、無実の民間人に罪を着せて殺害し、拷問を続ける彼の行為を目の当たりにしたアンドリューは、良心の呵責に苦しんでいきます。非人道な行為を行う一方、父親として息子に電話をするような家庭的な部分もあるディークスは戦争が生んだ化け物のよう。でも、人間なんですよね。

 ドキュメンタリー監督としてアフガニスタンの実情を見てきたクラウス監督だからこそ、映像のみならず人物たちの精神状態はあまりにもリアルで100分にも満たないほどの短いドラマなのに、胸が苦しくて辛くて早く<アフガン>から脱出したくてたまらなかった。

 この苦しさはアフガニスタンに行った若き兵士だけではなく、戦争に行った全ての兵士たちが経験したであろう心の痛みのほんの一部なのだろうと感じます。戦争の恐ろしいところは、自分の中の正義が変わってしまうところ。人殺しが正義になることは異常そのものだけれど、目の前で人が死んでしまうリアルを突きつけられたら私の正義も変わるかもしれない。そんなことを考えるきっかけになった作品でした。ぜひこの作品を観て皆さんも戦争の恐ろしさを感じてもらいたいと思います。★★★★☆(森田真帆)

1月22日から全国公開

監督:ダン・クラウス

出演:ナット・ウルフ、アダム・ロング

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