「DVD=1」朝倉さや「古今唄集絵巻」民謡に新たな命吹き込む

 一節目からいきなり撃ち抜かれた。私が大好きな民謡『最上川舟唄』が、その壮大なスケール感はそのままに、新しい表情をみせている──。驚いてプロフィールを調べて、納得。歌うのは民謡日本一に二度輝いた若き実力派だった。

 1992年山形県生まれのシンガーソングライター・朝倉さや。幼稚園のころから歌いはじめ、小学2年生から本格的に習い始めた「民謡」をベースに、ポップスや演歌、スタジオジブリの映画作品の楽曲カバーなど多様な表現を見せてきた彼女の最新映像作品が本作だ。全国各地で歌い継がれてきた民謡の数々を、新たな編曲で“今”に届けるアルバム『古今唄集』の、未公開映像も含む映像集として製作されている。

 とにかく美しい音=歌声を放つ人だ。その音はのびやかに広がり身体中に染み渡ってくる。そんな彼女の才能を東京でいち早く見出したプロデューサー・solayaによるアレンジは、その歌声の魅力をさらに引き出している。また、歌う様子は一見クールにも感じるが、話しだせば素朴で朗らかな朝倉のキャラクターは、衣装も表情もくるくると変わる映像が伝えてくれるし、彼女が内に秘めている神性のようなものは、楽曲がしっかりとこちらに届けてくれる。そういう意味でこの映像作品は今の彼女そのもの、と言えるのかもしれない。約66分が永遠にも、つかの間にも感じる快作だ。

(ユニバーサルミュージック・3,545円+税)=玉木美企子

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