<隠れた名盤>加藤ミリヤ『COVERS -WOMAN & MAN-』初のカバーアルバムで力量発揮

 デビュー15周年を記念した初のカバー・アルバム。今回、2枚組にした事で彼女の歌手としての力量がより明確に出ている。

 DISC1は、女性アーティストのカバーで、加藤のオリジナルではと思えるほど自然な『そばにいるね』(青山テルマ)以外の6曲すべて、彼女がデビューする2004年以前の楽曲だ。ロック調の『本能』(椎名林檎)やダンスポップの『Don‘t wanna cry』(安室奈美恵)、バラードの『STARS』(中島美嘉)など幅広いが、歌声に演技的な要素がなく自然体で声を当てることで、楽曲の良さがそのまま伝わる。その意味では、徳永英明『VOCALIST』シリーズに近い印象を受けた。

 対して男性アーティストのカバー集となるDISC2は、尾崎豊やFISHMANSといったレジェンドから、藤井風やKing Gnuなど近年のブレーク組まで幅広く選曲。どんどんテンポが速くなりテンションも高まる『Teenager Forever』もキレよく上手いし、盟友・清水翔太の『花束のかわりにメロディーを』は、歌いこんでいるだけあって情感たっぷりだ。また、銀杏BOYZ『BABY BABY』やDragon Ash『百合の咲く場所で』など、パンキッシュなアーティストの作品も、加藤が歌うことで、彼らの人の好さが見えてくる。特に、RADWIMPS『me me she』は野田洋次郎の作詞家としての力量にあらためて感心した。

 たとえ自分が考えた言葉じゃなくても、自分の声で発してみることで、新たな意味や発見に繋がるということを本作が教えてくれるはず。

(ソニー・2CD通常盤 3182円+税)=臼井孝

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