2020年の大晦日、日本人同士によるビッグマッチが東京・大田区総合体育館で実現する。
世界ボクシング機構(WBO)スーパーフライ級チャンピオン井岡一翔(Ambition)が同級1位の田中恒成(畑中)を迎え撃つ一戦は、お互いのプライドを懸けた迫力満点の攻防が予想される。
4階級制覇の井岡が貫禄を見せるのか、それとも若さとスピードの田中が4階級制覇を達成できるのか。コロナショックを吹き飛ばす熱戦を期待したい。
日本初の4階級を制覇した井岡は31歳。6歳も若い挑戦者に対し「格、レベルの差を見せたい。どのような展開になっても負ける気がしない」と余裕のコメント。
11年にミニマム級の世界王座を獲得して以来、常にトップ戦線を歩んできた。
「田中はスピードがあり、パワーも分かっている。しかし、私はボクシングを熟知している」と自信をのぞかせる。
井岡の戦績は25勝(14KO)2敗。右のボクサーファイターで、安定感は十分だ。
一方の田中はハンドスピードに定評があり、負けん気の強さを持つ。打ち合いになっても逃げることはない。
こちらもミニマム級の世界王座を15年に奪った後、既に3階級を制覇。「自分にとってキャリア最大の勝負。KOを狙っている。相手はアグレッシブで実にうまい。でも必ず勝つ」と抱負を口にした。
デビュー以来、15連勝(9KO)とまだ負けを知らない。4階級制覇に向け、「このチャンスをつかむしかない」と闘志満々である。
日本人同士による初の世界戦は1967年12月の沼田義明―小林弘で、その後数々の名勝負が展開されてきた。
薬師寺保栄―辰吉丈一郎、畑山隆則―坂本博之といった対戦がファンを楽しませてきたが、今回も文句なしの好カードといえるだろう。
当初、井岡有利と見られていたが、ゴングが近づくにつれ、田中を評価する声も増えてきたようだ。
試合は初回からハイレベルの打撃戦になるのではないか。
田中が挑戦者らしく、積極的に踏み込み、井岡がどう対応するのか。田中も右ボクサーファイター。左ジャブから左右連打でポイントを重ね、好機とみれば一気にパンチをたたき込む。
井岡はボディーブローが実に巧妙で、このパンチで田中の勢いを止められるか。
ともにスタミナに不安はなく、中盤以降が勝負となりそうだ。そして終盤になれば、お互いに全力でパンチを繰り出すはずだ。
果たして、勝利の女神はどちらにほほ笑むのか。見どころの多い一戦になる。(津江章二)