『バクラウ 地図から消された村』元ネタは『七人の侍』?

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 昨年のカンヌ国際映画祭で、『パラサイト 半地下の家族』とパルムドールを競い、結果『レ・ミゼラブル』と審査員賞を分け合ったブラジル映画だ。タイトルの「バクラウ」は舞台となる村の名前だが、この映画の主人公の名前でもある。特定の主人公も狂言回しも持たず、かといって群像劇でもない本作は、村自体が主人公と言えるから。長老である老婆の死をきっかけに、村は次々と不可解な出来事に見舞われる。果たして真相は?

 シネスコの横長の画面で切り取られた乾いた大地は、どこかマカロニウエスタンを彷彿とさせる。それでいて、エド・ウッドの映画のようなチープなUFOが飛来し、SFホラー『光る眼』のパロディーのようなシーンもある。かと思えば、スプラッタホラーばりに特殊効果を駆使した残虐シーンもふんだん…とジャンル映画の既視感に満ちているのに、全くジャンル映画らしくない。つまり、いろんなジャンルがごった煮のように混ざり合うことで、見たこともない世界観が立ち現れているのだ。

 それでも、観終わった時に頭に浮かんだ作品がある。黒澤明の『七人の侍』だ。本当の主人公は(勝ったのは)百姓たちだったという日本の名作が、実は元ネタなのではないかと。本作の奇想天外さやジャンル映画のごった煮感は、あくまでも隠れ蓑に過ぎない。ダマされないように心して観てほしい野心作である。★★★★☆(外山真也)

監督・脚本:クレベール・メンドンサ・フィリオ、ジュリアーノ・ドルネレス

出演:ソニア・ブラガ、ウド・キア

11月28日(土)から東京・シアター・イメージフォーラムにて公開

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