セロニアス・モンク『パロ・アルト~ザ・ロスト・コンサート』一人の高校生の思いに応えた奇跡のライヴ

 毎日報道されるBLMのニュース。今なお解決されないアメリカでの人種問題ですが、公民権運動のシンボルであったルーサー・キング牧師が暗殺され黒人暴動が頻発していた1968年10月、カリフォルニア州パロ・アルトで奇跡のコンサートが行われました。

 多くの貧しい黒人が住むイースト・パロ・アルトとスタンフォード大学もある白人層の街パロ・アルトが音楽で一つとなったというその伝説のライヴはダニー・シャーというジャズ好きの高校生によって実現されました。国連平和部隊支援のためにベネフィット・ライヴを企画していた彼は自由を象徴するジャズで人々の結束を図ろうとジャズ・レジェンドのモンクを無理と承知で招いたのです。

 このアルバムはダニーの思いに応えたモンクが500ドルのギャラで学内コンサートに出演した記録です。「ルビー・マイ・ディア」から始まり「ブルー・モンク」「エピストロフィー」など当時のレギュラー・カルテットによる全6曲は手抜きなどまったくない真剣勝負のパフォーマンスです。

(ユニバーサル・2400円+税)=北澤孝

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