「歌が勝手に生まれてしまう」のだという。そうなると、止められないのだと。ならば伸びやかに広がり、深く、力に満ちている彼女の楽曲の数々はどこからもたらされているものなのだろう……。私にはわからないけれど、たしかに前から知っていたような、私たちが聴くことを約束されていたような「確かさ」が備わっていることを、彼女の歌う姿を見ながら改めて実感した。
アーティスト・Coccoによる2019年の全国ツアーのなかから、12月13日に開催された東京国際フォーラムでの様子を収録した本作。じつに3年ぶりというツアーのブランクはどこへやら、歌声もしなやかな舞いも、まさに内側から湧き出るようなパフォーマンスで会場を包み込んでいる。
セットリストは最新アルバム『スターシャンク』の楽曲を中心にしながら、スパイスのように『強く儚い者たち』『樹海の糸』といったおなじみの楽曲も披露。カーテンコールの美しいレヴェランスまで、目が離せない101分だった。
(JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント・4500円+税)=玉木美企子