<隠れた名盤>島爺『挙句ノ果』メッセージ性や説得力が増した

 動画投稿サイトでの歌唱が人気となって2016年にデビューした男性の8曲入りミニ・アルバム。本アルバムで4作連続週間TOP20入りとなった。自称“永遠の82歳”とのことだが、よく響く歌声は、より幅広い邦楽ファンに好まれそうだ。

 本CDの全8曲は自ら作詞・作曲を担当。そのためか、以前よりも、メッセージ性や説得力が増している気がする。なんとなく聴けばラテン・ポップスに聴こえるように発音した『岐路と銃口』、スマホゲームの主題歌らしく現実を生き抜こうと力強く歌う『箱庭の理』など、全体的に自分を鼓舞するエールソングが多い。同じく動画投稿出身のラッパーVACONとのコラボ作『虚仮の一念』は、高速で二人が掛け合っていくアッパーチューンで、敵を次々と倒していく感じが痛快だ。

 個人的に最も胸に響いたのは6曲目の『もいちど』。「キズだらけで鳴るメロディを とりもどしたくて 一歩だけすすむ」と噛みしめて歌う様子から、幾多の挫折や、それでも前を向く姿勢が映し出されて感動した。

 初回盤には、バンド形式と弾き語りの2つのLIVEから6~7曲ずつ収録。前者ではBUMP OF CHICKEN風の乾いた歌声多めに対し、後者では山崎まさよし風のブルージーな歌声中心で、引き出しが多い。特に『悲しくてやりきれない』のカバーなど後半は年輪を感じさせる。本作を聴けば、歌声や話し声からもその人となりをより敏感に察知するようになるはず。

(ワーナーミュージック・CD+DVD 初回限定盤 4000円+税)=臼井孝

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