<再ブレーク盤>杉山清貴『Rainbow Planet』深い味わいのシティポップ

 約2年ぶりとなるオリジナル作が、28年ぶりにアルバム週間TOP10入りを果たした。国内外で話題のシティポップを、こうして新作として聴けるのはとても喜ばしいことだ。

 本編の全10曲は、爽快な歌声と演奏に満ち溢れているので、一瞬80年代にタイムトリップしたような感覚になるが、それでいて、大人ゆえの苦さや優しさも描かれているので、中高年の方が聴くのにピッタリだ。

 具体的には、買ったばかりのレコードにワクワクする『Omotesando’83』や、妖しい恋に落ちていく『二人の色彩』『Fall in you』がリアルに響くのは、やはり杉山が滑らかな歌唱にて青春や恋を鮮やかに表現できるからだろう。他方、娘の幸せを静かに願う『Daughter』や、取り残された想いを抱きつつ未来のために歩き出そうと誓う『Other Views』あたりは、還暦を過ぎた人だからこそ表せる深い味わいがある。できるだけ体力を維持しながらも表現の幅を広げるというその姿勢には感服するばかりだ。特に、「長い旅の終わり」を迎えつつも、「僕の愛でずっと君を包み込むから」と愛おしく歌い上げる『君がどんな遠くにいても』に、それを強く感じた。

 ボーナス・トラックとして前年末のクリスマス・コンサートで歌った『Velvet Moon』を収録。ピアノ演奏と呼応した歌唱は、スタジオ録音よりもライブの方が上手い。大人ゆえの恋心を抱く人には、懐メロじゃなく、若者向けのJ-POPじゃなく、本作こそが心にフィットするはず。

(キング 通常盤 3000円+税)=臼井孝

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