『悪の偶像』サスペンスに収まらず、言葉で言い尽くせない衝撃度!

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*新型コロナウイルスの影響で公開が延期されていました。公開日が決定したので再掲載します。

 ハン・ソッキュ×ソル・ギョング。韓国を代表する俳優二人がW主演を務め、一方は息子が起こしたひき逃げ事件で政治家生命の危機に直面する“加害者の父”、もう一方は一人息子を奪われた“被害者の父”を演じる。そう書くと、隠蔽する側と暴く側が攻防を繰り広げる展開を連想するかもしれないが、これは近年の韓国映画が得意とする題材だけに、ありきたりな図式に回収されるはずもない。

 その際に重要な役割を果たすのが、事件現場に居合わせたはずの被害者の新妻。その“消えた目撃者”を二人が捜す過程をカットバックのように見せる、前半のクライマックスと呼べる攻防が秀逸だ。加えて、新妻のキャラクター自体も強烈。次第に明らかになっていく彼女の正体、それによって二転三転する二人の関係性は、サスペンスという枠組みに収まらない社会性を帯び、言葉では言い尽くせないほどの衝撃度である

 リーだけでなく演出にもヒネリが利いており、視覚的なイメージを積み重ねて、じわじわとサスペンスを高めながら世界観を強固に構築していく手腕は見事という他ない。イ・チャンドン、ホ・ジノ、カン・ジェギュといった大物たちの監督デビューに立ち会ってきた“目利き”ハン・ソッキュのお眼鏡にかなっただけに、底知れない才能を感じさせる。★★★★★(外山真也)

監督・脚本:イ・スジン

出演:ハン・ソッキュ、ソル・ギョング、チョン・ウヒ

6月26日(金)から全国順次公開

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