『スウィング・キッズ』 捕虜収容所に響くタップの音

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 第一級のミュージカル映画を観ているような味わいがある。朝鮮戦争時の捕虜収容所を舞台にした韓国映画で、戦争×タップダンス、民主主義×社会主義という対極にあるものをあえてぶつけることにより見事な化学反応が生まれている。監督は、『サニー 永遠の仲間たち』のカン・ヒョンチョル。従軍記者のワーナー・ビショフが撮った、巨済(コジェ)捕虜収容所で仮面を被り、自由の女神像の前で踊っている捕虜たちの写真から着想を得たという。

 1951年、韓国・北朝鮮・アメリカ・中国籍の5人による寄せ集めチーム「スウィング・キッズ」の誕生物語で、タップダンスを通した人種や国籍、イデオロギーを超える心の結び付きが、ベニー・グッドマン、デヴィッド・ボウイらの名曲に乗せて描かれる。

 登場人物たちが歌とダンスによって心情を吐露するような、いわゆる正攻法のミュージカル映画ではないけれど、踊りたい!という欲求が募り、日常の音が次第にダンスのリズムに聞こえてきて我慢できずに踊りだすシーンなどは、まさにミュージカル映画のそれ。ただし、悲劇の歴史を背景にしているだけに、ただただ甘いだけではなく苦味もたっぷり。絶対にハリウッドでは作れないタイプの音楽エンターテインメントだ。ミュージカル好きは特に必見! ★★★★★(外山真也)

監督・脚本:カン・ヒョンチョル

出演:D.O.〈EXO〉、ジャレッド・グライムス

2月21日(金)から全国公開

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