自身初となる武道館公演の模様を完全収録した、初の映像作品。けれどなにか突飛なことはなくて、いつもどおり頭にタオルを巻いて、ギター一本でステージの真ん中に彼はいた。
4枚目のアルバム「GOOD LUCK TRACK」を携えて行われた全国ツアーの千秋楽として開催された本公演。披露された楽曲はじつに34曲にのぼり、152分間、ときおりほんの少しだけMCの小休止をはさんだら、あとは延々、延々と歌い、叫び続ける姿がそこにあった。喉も身体も壊れてしまわないんだろうか。たくさんの憧れや期待を背負って立つアーティストという存在の孤独を、彼の佇まいはいつも知らしめてくれる。その真剣勝負の懸命さが、どうしたって胸を打つ。
誰かのためじゃなく、自分のために聴こえる歌。いや誰かが歌っているんじゃなく、自分の身体から湧いているように感じる歌。「僕を武道館まで連れてきてくださってありがとう」。そうポツリとつぶやいた彼に、轟くような拍手が送られていた。
(ビクターエンタテインメント・5500円+税)=玉木美企子