『恋と国会 1』西炯子著 政治家だって人間なんだ

 癒着に汚職に賄賂に失言。そんなんばっかが目に留まり、政治に期待したことがない。誰がやっても、日本はどうせ変わらないんじゃないかって思っちゃうし、自分の暮らしと政治が繋がっているって実感がないまま、ここまで来ちゃったようにも思う。

 だから本書を見つけたときに、果たして楽しめるのか気になった。でも「恋と国会」ですからね、50パーセントは興味があるし、「国会と恋」じゃないのもいい。なんかいける気がして手に取った。

 漫画家、西炯子の新刊は「前代未聞の国会ラブコメ」。父の地盤を引き継いだ世襲議員の御曹司、海藤福太郎(25)と、正面突破しかできない元地下アイドル、山田一斗(25)。二人は大国民党--長年、日本の政界を牛耳ってきた政権与党--から新人議員としてデビューを果たす。謎の慣習や体裁を整えるためだけの仕組みなど、政界の現実を理解し受け容れる「大人な」福太郎。それに対し正面突破しかできず、納得しないと首を縦に振れない一斗。周囲からは問題児としてマークされ、何か発言するたびにネットで騒がれてしまう彼女の世話係を、福太郎はなぜか任されてしまう。荒ぶる総理に、どエロい支援者。

 同期の優秀な野党議員に、「愛ある人格者であれ」と声高らかに叫ぶ福太郎の父……。一筋縄ではいかない強者どもも登場し、物語は進む。

 いやー、流行ってますね働く女子の世直し物語。今期のドラマ「同期のサクラ」がそんな感じの話だし。そういう意味では目新しさはないけれど、政界ってこういう仕組みなんだって勉強にもなるし、なにそれヘンなの!ってルールも描かれてるのも面白い。例えば、政治家ってなんちゃら委員になったりするじゃないですか。忙しい人ってその委員会に出る時間がなかったりするらしく、途中から新人議員が代打で委員会に出たりするんだって。さらに代打の代打もいて、じゃんじゃん入れ替わり立ち替わり、なんてこともあるそうですよ!キャバクラか。ちなみに代打や代代代打の仕事は「頭数を揃えること」と、「『賛成の議員は起立を』って言われたときに立つ」のふたつであって、法案についての理解なんて必要ないんだって。えーなにそれーー。

 そんな特殊な世界でも、一斗はこの国をより良くするために立ち向かう。芯の強さと明るさと、チャーミングさを持ち合わせながら、その一方でこの国で生きる苦しみを深い闇として抱えている彼女。そして期待の新人として注目こそされているが、自分の実力ではなく家柄で評価されていることに、どこか割り切れなさを感じている福太郎。それぞれの置かれた立場の葛藤が、グッと読み手に迫ってくる。

 政治家も人間なんだなあ。そんな子供でも知ってることにあらためて気付かされた本書。二人がこれから、何を見つけ、何を手に入れ、何を手放すのか。そして50パーセントを占めるであろうラブの展開も見届けつつ、これまで苦手意識満載だった政治と、少しだけで距離を縮められたらいいなって思います。(小学館 591円+税)=アリー・マントワネット

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