<ブレーク盤> 渋谷すばる『二歳』 生きづらいと悩む多くの人に届いてほしい

渋谷すばる『二歳』

 ソロとしての再デビュー・アルバム。DVDにはレコーディングや旅のドキュメント映像があるが、CDだけでも本作への熱い想いが痛いほど伝わる。

 全12曲、渋谷本人が作詞、作曲、編曲を手がけており、1曲目の『ぼくのうた』で、「歌を歌わせて頂けませんか」と無様に繰り返す歌声にまず衝撃を食らう。その後、トータス松本のように明るく歌うポップロック系の『アナグラ生活』、甲本ヒロトのようにパンキッシュに歌う『ワレワレハニンゲンダ』、さらに斉藤和義のように飾らずに歌うフォーク系の『なんにもないな』など歌い方は様々だが、どの曲でも言葉がハッキリと伝わるのが渋谷流だ。本作では「歌いたい」「生きたい」というメッセージの強さもそれを後押ししている。

 特に、8曲目から11曲目の流れが圧巻。別の道へ弾かれたモノに共感する『ベルトコンベアー』、外界に放たれて暗中模索する『ライオン』、はみ出し者と言われても自分らしく走ろうと誓う『TRAINとRAIN』は、何かや誰かから独立した人なら、その直後の不安や孤独、それらを経て見つけた信頼を想い出すことだろう。そして11曲目『生きる』は、歩めなくてもまずはつま先だけでも向けようと真摯に歌うロッカバラード。今を生きづらいと悩む多くの人に届いてほしい。

 ラストは心の叫びを抱えた人の傍で優しく語りかける『キミ』。本作を聴けば、頭を深く下げたり、やり直したりする人の勇気が胸に強く響くはず。

(ワーナー・CD+DVD初回限定盤4000円+税)=臼井孝

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