「ハイになろうぜ!」
ゆるくウェーブのかかった長い黒髪姿にギターを抱え、オーディエンスに飛び掛らんばかりにコールを投げかけ、シャウトする。背後には、シルクハットを被ったスカルのイラストが……。まるでロックの教科書のごとき熱いライブにただただ、圧倒される。ガンズ・アンド・ローゼズでデビューし、多様なチャレンジでその人気を不動のものとしてきたスラッシュと、マイルス・ケネディ&ザ・コンスピレイターズによる2019年2月の最新ライヴ作品が早くもDVD化となった。
2018年9月から断続的に続いてきたワールドツアーの終盤、のちに伝説となる数々のロックンロールライヴが行われてきたイヴェンティム・アポロ(旧ハマースミス・アポロ)の会場を熱狂的なファンで埋め尽くし、なかには親子連れとおぼしきオーディエンスの姿も。まさに世代を超えて愛される普遍的な存在となったその音楽にはやはり、聴く者を非日常へと連れ去ってくれるようなパワーを(ロックにうとい私でも)感じる。なかでも本作は、行き過ぎた演出なくストレートなギターとドラム、そしてボーカルの力で世界を組み立てているのが素晴らしい。個人的にはスラッシュの、脇の下どころか腰骨あたりまで開いたタンクトップから目が離せなかった。
(Ward Records・5500円+税)=玉木美企子