破格のKOパンチャーがリング復帰へ 元WBC世界フライ級王者・比嘉大吾

WBCフライ級世界戦で、クリストファー・ロサレス選手(左から2人目)に9回TKOでプロ初黒星を喫した比嘉大吾選手=2018年4月15日、横浜市の横浜アリーナ

 破格のKOパンチャーがリングに戻ってくる。

 体重超過で無期限出場停止となっていた元世界ボクシング評議会(WBC)フライ級チャンピオンの比嘉大吾(白井・具志堅スポーツ)は10月3日、日本ボクシングコミッション(JBC)から処分が解除され、リングへの復帰が可能となった。

 今後は体重を上げる予定で、15勝(15KO)1敗という驚異のKO率を持つ男のカムバックに注目が集まる。

 悪夢が訪れたのは昨年4月の3度目の防衛戦だった。

 前日計量で900グラムオーバーし、再計量の前に具志堅用高会長がギブアップを宣言。日本人の世界王者としては初めてウエートオーバーでタイトルをはく奪された。

 試合も9回TKO負けを喫し、初黒星。さらに計量失敗を重く見たJBCから厳しい処分を科されたのだ。

 もちろん本人が体重を調整できなかったことが原因であり、ボクサー生命にかかわる窮地に追い込まれた。

 しかし、比嘉は復帰をあきらめなかった。地道にトレーニングを続け、9月27日、具志堅会長とともにJBCに処分解除を申し入れた。

 早速開かれたJBCの倫理委員会で対応が協議され(1)処分決定から1年5カ月が経過(2)階級を上げて復帰する準備を進めている―などが考慮され、処分解除が認められた。比嘉陣営は年内復帰を計画しているという。

 フライ級で比嘉のパワーは抜きん出ており、復帰後のファイトを期待するファンは多い。それだけの才能の持ち主でもある。

 沖縄県浦添市出身の比嘉は、中学生まで野球に熱中していた。しかし、テレビで放送された具志堅会長のKOダイジェストに心を奪われ、ボクシングの道に踏み込んだ。

 高校時代から攻めの姿勢が目立ち、本人も五輪出場を夢見ていたという。

 その中、具志堅会長に勧められプロ転向を決意した。2014年6月、初回KO勝ちでデビューを飾り、その後は面白いようにKOの山を築いた。

 昨年2月、初回KOで2度目の防衛に成功したが、同時に15連続KO勝ちの日本タイ記録を樹立した。

 攻撃的なスタイルでフック、アッパーを顔面からボディーに打ち分ける。力強さが光り、チャンス時での詰めも鋭い。

 今後はバンタム級での復帰が有力視されており、今を時めく井上尚弥(大橋)のライバルになれる器との評価もある。生まれ変わった比嘉のボクシングが楽しみだ。(津江章二)

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