世界ボクシング協会(WBA)と国際ボクシング連盟(IBF)バンタム級王者の井上尚弥(大橋)が11月7日、さいたまスーパーアリーナで最強の座を争うワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)決勝の舞台に立つ。
相手は元世界5階級制覇のノニト・ドネア(フィリピン)。実績豊富なベテランに対し、どのようなパフォーマンスを見せてくれるのか。世界中の関係者、ファンが注目する大一番だ。
井上の強さは抜きん出ている。昨年10月、WBSS1回戦で、フアン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)を1回、右ストレート一発でKO。計り知れない衝撃だった。
さらに今年5月の準決勝でもエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)を2回TKOで下した。
この試合ではボディーブローが特に光り、途方もない才能を感じさせた。これで18戦全勝(16KO)。向かうところ敵なしの快進撃が続いている。
世界的な評価もグングン上昇している。体重が同じという想定で競うパウンド・フォー・パウンド(PFP)でも、海外の多くのメディアがベスト3以内にランクしている。
日本人ボクサーがこれほど上位に顔を出した例はなく、井上の実力が文句なしと認められている証明といえるだろう。
スピード、パワー、テクニック。三拍子がそろい、欠点が見当たらない。大げさではなく、井上の負ける姿が想像できないほどだ。
ドネアのキャリアは素晴らしく、アジアが誇る名王者の一人である。7年前、西岡利晃(帝拳)を9回TKOに下したファイトは圧巻だった。
大方の予想は井上有利だが、「そう簡単にドネアを攻略できないだろう」という意見があるのも事実。40勝(26KO)5敗の戦績が示すように、パワーがあり何よりプライドがドネアを支えている。
その両者が8月下旬、東京都内で記者会見に臨んだ。
ドネアは「井上は世界最高のボクサーの一人。私は必ず力を証明する」と意欲満々。井上も「どれだけ大きな試合か分かっている。持っている力を発揮し、優勝を目指す」と必勝宣言した。
試合は緊張感の中、KOのスリルに満ちた戦いになるのは必至だ。
結論としてドネアの実績を加味しても「井上KO勝ち」の可能性はかなり高いのではないか。世界のファンを驚かせるような結末が待っているような気がする。(津江章二)