『サウナのあるところ』 文字通り、体も心も裸になる場所

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 日本は今、空前のサウナ・ブーム。若者や女性にまで愛好者=サウナーが増え、「ととのう」という日本独自のサウナ文化まで誕生、漫画やテレビドラマのネタにもなっている。そんな日本に、サウナの本場フィンランドからサウナのドキュメンタリーが届いた。実はフィンランドがサウナの本場とは知らなかったのだが、本作を観ると、街の至る所に「SAUNA」の看板が。サウナは、フィンランド語なのだ。

 人口550万ほどのフィンランドには、約300万もサウナがあるという。一家に一つ、まさに生活の一部だ。本作にはオーソドックスなタイプだけでなく、廃車やキャンピングカー、電話ボックスを利用したものまで実に多彩なサウナが登場する。いろんなものからエントツが突き出ている光景は、我々日本人にしたらけっこうシュールだ。

 しかも、サウナはフィンランド人にとって、体だけでなく心も裸になる場所のようで、これまで誰にも打ち明けなかったこと、例えば離婚が原因で娘に会えない苦しみや過去の犯罪歴、大切な相手への思いなどをにわかに吐露し始め、時には号泣することも。つまり本作は、サウナの映画であると同時に、下層社会で懸命に生きる男たちの人生の映画でもあるのだ。もちろん、水蒸気は映画的なアイテムだし、ガラス張りのサウナに至っては、それ自体がフォトジェニック! サウナは、放って置いても映画になる被写体なのだ。★★★☆☆(外山真也)

監督:ヨーナス・バリヘル、ミカ・ホタカイネン

9月14日(土)から全国順次公開

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