『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』 やはり細部こそが魅力のタランティーノ

今回が初共演の2人。ファッションも掛け合うセリフもいい

 レオとブラピの初共演も話題のタランティーノの最新作だ。落ち目になったテレビ西部劇のスター、その専属スタントマン、そして、夫のロマン・ポランスキーと共に隣に越してきた新進女優シャロン・テートの3人を主人公に、タランティーノの1960年代ハリウッドへの憧れと愛が暴走する。

 だから、ここ最近は戦争ものや西部劇といったジャンル映画の枠組みを借りて、娯楽性の中に社会メッセージを盛り込むスタイルが続いていたが、今回はむしろ童心に返った印象。その極めつけといえるのが、1969年8月9日に起きるシャロン・テート殺害事件までのカウントダウンの体裁を取りながら迎える衝撃のクライマックスだろう。

 とはいえ、タランティーノ作品の魅力は、やはり細部にこそある。その意味では、今回もやはりいつものタランティーノ。例えば、撮影の待ち時間にレオがプロ意識の高い子役の少女と繰り広げる演技論や、ブラピがカルト集団のコミューンを訪れる緊迫したシーン、同じく愛犬への餌やり、そして、もちろん「残酷なおとぎ話」とでも形容したくなるクライマックス…。あるいは、趣向を凝らしたカメラワークや場面転換もしかり。タランティーノが映画ファンの心をつかんでやまない理由も、まさにここにある。映画の神は細部に宿るから。★★★★★(外山真也)

監督・脚本:クエンティン・タランティーノ

出演:レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー

8月30日(金)から全国公開

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