『引っ越し大名!』 藩の存亡かけたミッションに挑むのは、引きこもり侍

(C)2019「引っ越し大名!」製作委員会

 『超高速!参勤交代』で時代劇に新風を吹き込んだ製作チームの新作だ。今回も土橋章宏が、自身の時代小説を基に脚本を手掛けている。舞台は、幕府から大分への国替えを言い渡された姫路藩。主人公は、人付き合いが苦手な書庫番の引きこもり侍で、誰もやりたがらない総責任者“引っ越し奉行”を押し付けられるが、持ち前の真っ正直さと博識によって周囲を巻き込み、藩の存亡を懸けたミッションに挑んでいく…。

 監督を務めるのは、犬童一心。時代劇は『のぼうの城』で経験済みだが、今回はむしろ『メゾン・ド・ヒミコ』『グーグーだって猫である』のテイストに近い。時代劇らしくチャンバラや陰謀劇も描かれるものの、コメディー要素だけでなくミュージカル・シーンまであってテンポがゆるく、独特のオフビート感を醸す。時代劇としては超異色作なのだ。

 でも、それこそが犬童ワールド。主人公は、立身出世に興味がなく、剣の腕前もからっきし。時代劇のヒーローとは真逆のイメージだ。リア充よりも落ちこぼれや社会的弱者に寄り添う犬童監督らしい。そう考えると、豊臣の大軍を武力ではなく田楽踊りで食い止めた『のぼうの城』の主人公にも通じるところがある。それだけに時代劇ファンの評価は割れそうだが、少なくとも犬童ファンは必見! ★★★☆☆(外山真也)

監督:犬童一心

原作・脚本:土橋章宏

出演:星野源、高橋一生、高畑充希

8月30日(金)から全国公開

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