『マイ・エンジェル』 愛し方に悩むお母さんたちへ

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 2018年のカンヌ国際映画祭「ある視点部門」に正式出品されたヒューマンドラマ。南仏コート・ダジュールを舞台に、娘を心から愛しながらも、奔放な生活を送るが故に、娘を振り回し、最終的には娘の前から逃げ出してしまうシングルマザーと娘の複雑な心情を、新人女性監督のバネッサ・フィロが描きます。愛し方がわからず、苦悩する母親を演じるのは映画『エディット・ピアフ 愛の讃歌』でアカデミー賞主演女優賞を受賞したマリオン・コティヤール。知的な彼女とはうって変わった、超パリピなお母さんを熱演しています。

 娘のことは大好きで、愛しているけれど、どうしても自分のことが優先になってしまう。再婚相手とも結婚式で大きなトラブルを起こして、いつも酒に酔っ払っている。ある日、彼女は精神的に限界を感じて、娘の前から姿を消します。凍りついた瞳をした娘のエリーをどう愛すればいいのか。自分自身すら愛することのできない母親の苦悩を、名女優のマリオンが熱演。はたから見ればただのダメな母親かもしれないけれど、若くして子供を産んだわたしには、どこか共感する部分がありました。この映画を観て、ただ単に「最低な母親だ」と思うかもしれませんが、そこからもう一歩踏み出して考えてもらえたら、何かが変わる気がします。本当は我が子を愛したいのに、愛せないお母さんがいたらぜひ観て欲しい。そんな母と娘の関係を客観的に描いた本作を観て、何かを感じてもらえたらと思います。★★★★☆(森田真帆)

監督:バネッサ・フィロ

出演:マリオン・コティヤール、エイリーヌ・アクソイ=エテックス

8月10日(土)から全国順次公開

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