「リレーコラム」全米OPゴルフで松山英樹に変化 前向きな言葉に精神面の進化も

全米オープンゴルフ第1ラウンド、14番で寄せの第3打を放つ松山英樹。これが入りイーグルを奪った=ペブルビーチ・リンクス(共同)

 ゴルフ担当を離れて約半年。現在は東京から札幌に居を移してプロ野球の日本ハムを担当している私が、幸運にも男子ゴルフのメジャー、全米オープン選手権(6月13~16日・米カリフォルニア州ペブルビーチ)を取材する機会に恵まれた。

 久しぶりのトーナメント取材ということで頭の中を野球からゴルフに必死に切り替えながら約1週間奔走したが、そこで印象に残ったのは日本のエース、松山英樹の変化だった。

 結果から記せば、優勝争いに絡むことなく21位。バーディー以上のホールが全体最多の20もありながら、一方でミスも目立ち、メジャー初優勝を果たした伏兵ゲーリー・ウッドランド(米国)から11打の大差をつけられた。

 日本男子初のメジャー制覇を目指す松山からすれば、納得のいかない結果だろう。

 だが、大会前から最終日まで、「プレーは良かったと思う」「引きずらずにできた」「マスターズの時より良くなっている」など、ネガティブな言葉だけでなくポジティブな言葉も多く聞くことができた。

 日本ハムの春季キャンプが米ツアーのフェニックス・オープン(1月31日~2月3日)と同じアリゾナ州スコッツデールで行われていることもあり、トーナメント最終日に顔を出したこともあって、松山に会ったのは久しぶりというわけではない。

 だが、緊張感が高まるメジャーで以前より柔らかな雰囲気を醸し出しており、少々驚きを覚えた。

 ゴルフ取材に明け暮れた昨年末までの5年間は、松山の活躍を追いかけることが中心だった。

 個人的にはここまでで最も世界の頂点に迫ったと感じた米ツアー5勝目となる2017年8月の世界選手権シリーズ、ブリヂストン招待。さらに翌週に行われた最終盤まで優勝を争った全米プロ選手権と、両試合を現地でカバーし、その時、松山本人の口から出てきたのは「成績で言えば良かったが、自分の感覚としては良くなかった」だった。

 自分に対して厳しい言葉を並べ、報道陣が「ここは良かったのではないか」と聞いても首を縦に振ることは少なかった。

 そこからの、前向きな言葉。前述のブリヂストン招待から約2年、勝利から遠ざかっているのは事実で、特に昨年は左手の故障の影響もあって不調に陥った。

 その期間は「いろんなことをやった。悪いところから良い方向に持っていく自信はあったが、それが全部うまくいかなかった」と言う。

 2013~14年シーズンから本格参戦した米ツアーで最も大きな挫折を味わったことで、一から自分を見つめ直し、試行錯誤していくことによって、プレーだけでなく精神面でも大きく進化しているのではないだろうか。

 タイガー・ウッズ(米国)の復活で再び注目が集まりつつある男子ゴルフだが、日本勢の苦戦もあって国内での盛り上がりはやや欠けている。

 松山はショットについては元々世界でも1、2を争うレベルの精度を誇り、けがも癒えて体も目立った不安はない。心技体が整いつつある今だからこそ、今季残り少なくなった米ツアーで久々の優勝、今季の最後のメジャーとなる全英オープン選手権(7月18~21日)での活躍に期待したいところだ。

杉山 勝則(すぎやま・かつのり)プロフィル

2008年共同通社入社。本社運動部、大阪運動部を経て、広島支局で主に広島カープを取材。12年末から本社運動部でゴルフ、ラグビーなどを担当。18年末から札幌支社編集部でプロ野球の日本ハムをカバーしている。山口県出身。

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