『Diner ダイナー』 美×食×死が織り成す狂気の宴会

(C)2019 「Diner ダイナー」製作委員会

 『さくらん』『ヘルタースケルター』で映画監督としても高く評価された蜷川実花。色彩が横溢するカラフルな世界観は圧倒的で、特に照明のマエストロ・熊谷秀夫と組んだ『さくらん』では、光と陰で物語るということまでやってのけている。過去2作は安野モヨコ、岡崎京子という似たタイプの漫画家の原作だったが、今回は一転して小説が原作。しかも、アクション・シーンがふんだんにあるのだ。元殺し屋の天才シェフが取り仕切る殺し屋専用の食堂(ダイナー)を舞台に、美×食×死が織り成す狂気の宴会が催される。

 とはいえ、蜷川ワールドはこれまで通り。料理の映画なのにあえて料理を美味しそうには見せず、過剰な色彩とカリカチュアされた演技によって、ゴージャスでグロい世界観が構築されている。その証左として、ダイナーには横尾忠則の作品がいくつも飾られているのに、浮くことなくすんなりと画面の中に溶け込んでいる、といえば納得できるだろう。

 そんな徹底的に作り込んだ世界観の中で、主演の藤原竜也はじめ玉城ティナ、窪田正孝らキャスト陣も、これまでの出演作では見せたことのないような美しさと色気を放つ。写真家・蜷川実花の面目躍如だろう。強いて挙げるなら、ラストのメキシコのシーンが突き抜けたピーカンでないことだけが惜しまれるが、決して美しいだけではない本能まで刺激する映像センスは、さすがというほかない。★★★★★(外山真也)

監督:蜷川実花

原作:平山夢明

出演:藤原竜也、玉城ティナ

7月5日(金)から全国公開

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