ナタリー・バイ主演のフランス映画だ。戦場のシーンは一切ないけれど(夢としては登場)、女性の視点で描かれた一種の“戦争映画”と言えるだろう。舞台は、第1次大戦下のフランスの田園地方。男手を全て戦争に取られ、女たちだけで農園を切り盛りしなければならない女主人のオルタンスは、若い働き手として孤児のフランシーヌを雇う。よく働く彼女は、女主人だけでなく家族たちからも気に入られ、前線から休暇で戻った次男ジョルジュと恋に落ちる…。
ポイントとなるのは、ナタリー・バイ演じるオルタンスと、その娘ソランジュ(バイの実娘ローラ・スメットが演じている)、そしてフランシーヌという3人の女性の対比にある。家族やその体裁を最優先にする封建的なオルタンス。夫がありながら女としての欲望を抑え切れないソランジュ。だが結局は、彼女も家に縛られている。対照的にフランシーヌは、ジョルジュの子を身籠ると、一人で育てようと決意する。本作には、現代をも照射する“女性映画”の魅力があるのだ。
それでも、この映画の最大の見どころは、フランスが誇る撮影監督キャロリーヌ・シャンプティエによる自然光を生かした映像の美しさだ。ミレーの絵画のような叙情性とルノワールの生命力を併せ持つ、その圧巻の画面を観るためだけでも映画館に足を運ぶ価値は十分にある。★★★★☆(外山真也)
監督:グザヴィエ・ボーヴォワ
原作:エルネスト・ペロション
出演:ナタリー・バイ、ローラ・スメット、イリス・ブリー
7月6日(土)から全国順次公開