P!NK『ハーツ・トゥ・ビー・ヒューマン』 スーパー・ヒロインだからこそもつ心の葛藤

P!NK『ハーツ・トゥ・ビー・ヒューマン』

 今、世界最強の女性ポップ・アイコンと言えばビヨンセと彼女をおいて考えられません。グラミー歌手としての才能、理不尽な社会を問いただすメッセンジャー、想像を超えるライヴ・パフォーマー、女性や性的マイノリティーを擁護する活動家、そして2児の素晴らしい母そして妻。その全てに決して手を抜かない彼女の姿はまさに音楽界のキャプテン・マーベルと言えます。この2月<ブリット・アワード2019>でインターナショナル・アーティストとして初の功労賞を受賞した彼女にとって、2年ぶり通算8作目の新作です。

 「ハッスル」から始まるピンクらしいエネルギーに溢れた作品は、シーア、ベック、マックス・マーティン、ネイト・ルイス(FUN.)などのトップ・ライターとの共作。注目されるのは彼女の詞、まさにスーパーと言える強い女性であるからこそ持つ孤独感、不安、疑念、弱さが歌われます。「大統領を好きなフリをしよう」と言う一節にはこれまでとは違った彼女の心境が感じられます。(ソニーミュージック・2200円+税)=北澤孝

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