前世界ボクシング協会(WBA)ミドル級チャンピオン村田諒太(帝拳)が、ボクサー人生を左右する舞台に立つ。
村田は昨年10月、ロブ・ブラント(米国)に判定で敗れ、世界戦2度目の防衛に失敗した。
一度は引退も視野に入れたが、再起を決断。7月12日、大阪市のエディオンアリーナ大阪でブラントの王座に挑む。
負ければリングを去る可能性が大きくなるはず。プレッシャーのかかる中、雪辱を果たすことができるだろうか。
昨年の試合は言い訳ができないほどの完敗だった。
本格的な練習を始めた9月初旬に発熱し、調整ペースが乱れた。本調子にほど遠い状態で本番を迎え、ブラントのスピードに圧倒された。
採点で二人がジャッジが10点差、一人が8点差をつける大差がついた。
自分のボクシングが全くできず、「98パーセントぐらい、やめようと思った」という。
リングを冷静に見詰める“闘う哲学者”はすっかり落ち込んだ。
しかし、時間がたつにつれ、悔しさが募ってきた。
昨年12月、「あの試合が集大成でいいのか。このままでは終われない。もう一度、世界戦の舞台に立ちたい」と現役続行を明らかにした。
そして、再起の一戦がいきなりブラントとの再戦に決まった。負ければ自分の立場が苦しいのは百も承知だろう。
ブラントの強さも分かっている。それでもリングに上がる姿に、村田のいい意味でのプライドがのぞく。
2012年ロンドン五輪金メダリストの村田は、日本人として初めてプロ、アマの両方で世界の頂点に立った。
しかも、世界的に人気が高いミドル級での快挙に称賛の声が相次いだ。
常に強者との対戦を望み、逃げることはない。「試合の結果が今後の判断材料になる。リング上で全ての力を出し切りたい」と雪辱を誓った。
ブラント戦を徹底的に研究し、敗因なども彼らしく分析。万全の準備を進めている。
だが、ブラント攻略は簡単ではないだろう。28歳の王者は2月、11回TKO勝ちで初防衛に成功している。
戦績も25勝(17KO)1敗と高勝率を誇り、終盤に入ってもスタミナは衰えない。
一方の村田は「前回の試合では足が動いていなかった。自分のミス」と修正点を挙げ、必勝をアピールした。戦績は14勝(11KO)2敗。
試合開始のゴングから目の離せない攻防は必至だ。
序盤から激しい打ち合いになることも予想される。果たして村田はどのようなパフォーマンスを見せてくれるのだろうか。(津江章二)