『僕たちは希望という名の列車に乗った』 高校生の正義感が巻き起こした国家的事件の真相

(C)Studiocanal GmbH Julia Terjung

 舞台は1956年の東ドイツ。ソ連支配下のハンガリーで、民衆が蜂起して数千人が亡くなったというニュースを聞いた高校生が、ハンガリー国民の姿に影響されて「みんなで2分間の黙祷を捧げよう」と提案します。クラス全員が2分間の黙祷を捧げますが、この出来事がおおごとになって、国家的事件となってしまうのです。正直、こんな小さなことから、先生や父兄を巻き込み、最終的に国を巻き込んだ問題にまで発展していく様子は本当に恐ろしい。

 高校生の正義感が起こした黙祷の何が悪いのか? 実は、当時の東ドイツはソ連の影響下にあり、この行為自体が社会主義国家への反逆と見なされてしまうのです。重罪を犯したとして主犯格の生徒は労働者として一生働くことを宣告され、生徒たちは1週間以内に仲間を密告してエリートとなるか、信念を貫くことで大学には行けない未来を選ぶのか、という過酷な選択を迫られます。学生同士の友情、そして自分が信じていることへの強い信念、正義感との葛藤、そして恋愛。たくさんのことが詰まった青春映画です。

 ちなみに、タイトルの「希望という名の列車」というのは、西側へ行くことができる列車。日本では平成が終わり令和の世の中になりましたが、この映画を通して、ドイツを取り巻く思想の問題や、かつてあったベルリンの壁など、私たちはもっともっと世界について学ぶ必要があることを痛感させられました。★★★★☆(森田真帆)

監督:ラース・クラウメ

出演:レオナルド・シャイヒャー、トム・グラメンツ、レナ・クレンク

5月17日(金)から全国順次公開

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